資本制以前の搾取
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 19:08 UTC 版)
マルクス経済学においては原始共産制では、生産力が低く、搾取は存在しないとされ、奴隷制において奴隷主階級が奴隷階級を初めて搾取するとされる。封建制では領主階級が農奴階級を搾取するとされる。 原始共産制では、生産力が低く、搾取は存在しないということになっているが、搾取とはひとつの観念であり、人が人の労働の一部を私有するという観念の発生が持続したことによって人間を牛馬と同等もしくはその下と見た考え方が奴隷制である。 そこには他者の労働の一部を私有化するという行為がその根底にある。その観念がどのように発生してきたのかということを考えれば、マルクスが言うところの原始共産制社会の中で、その萌芽が現れていたという見方を現在の考古学上から窺い知れる範囲ではとることが出来る。 マルクスが言うところの原始共産制社会とは、考古学上では中石器時代後半の社会に該当するものである。現在の考古学では狩猟採集社会であるその時代を、生産力が低いとは決して見ていない。社会は家族関係の延長線上にある親族社会であり、その関係の観念が親族を他者とは考えないものとなっていることによって、この社会では搾取は行われない。つまり、現代社会でいえば、家族の中で搾取が行われない[要出典]ことと同じである。 搾取が発生し始めた社会、人間が栽培植物を発見し、本格的な植物栽培に乗り出したとき、つまり農耕の発生が始まった社会であり、そこから多くの余剰生産物が発生し、本来共同体全体の労働による余剰生産物であるにもかかわらず、一部の者がそれを私有として消費した時点が、他者の労働の一部を私有化したということになる。そのことが搾取の始まりと言える。 やがて時間の経過と共に余剰生産物を利用した特別な階層が固定化されてくる。そこでは他者の労働の私有化(搾取という観念)が発生してき、共同体の中で固定化されてくる。 その時代、土地はいくらでもあった。そこに人間の労働力を投下すればいくらでも農耕によって生産力を上げることが出来る。そこから他の部族の土地が狙われ、強い部族がその土地を侵略した、それと同時に捕虜とした他部族民を奴隷としたということである。 搾取とは、他者の労働の私有化そのものである。現在の社会までその観念が発生時点から継続してきたことにより、現代社会でも人間による人間の搾取は行われている。
※この「資本制以前の搾取」の解説は、「搾取」の解説の一部です。
「資本制以前の搾取」を含む「搾取」の記事については、「搾取」の概要を参照ください。
- 資本制以前の搾取のページへのリンク