賃金抑制策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 05:35 UTC 版)
固定相場制では、賃金抑制によって価格競争力が高まり、経常収支が黒字になる。通貨統合されたユーロ圏でもこの現象がみられる。慢性的な経常黒字は、地域的な強さ(あるいは弱さ)として解釈できる。慢性的な経常赤字は、深刻な経済危機を引き起こす可能性もある。 変動相場制では、経常収支の赤字が解消された場合にのみ、賃金抑制が国際的な価格競争力の持続的な改善につながる。しかし、賃金抑制により国際的な価格競争力が向上し、経常収支が黒字化すると、自国通貨が評価され値上がりし、輸出が割高になって価格競争力が再び低下する。つまり価格競争力のために賃金抑制策をとり、経常黒字化を図ろうとすると、為替レートが上昇し、効果が打ち消される。例えば、1970年代初頭のブレトンウッズ体制終了後のドイツがある。当時ドイツの賃金水準は、国際比較で平均以下で労働生産性で優位であった。しかし世界的に変動相場制が導入され、ドイツマルクの為替変動によって、その優位性が損なわれた。 一方賃金抑制策は、対外的な視点ではなく、国内経済の視点で評価されるべきだとする主張もある。賃金抑制策で結果的に自国通貨が上昇すれば、仮に名目賃金が上昇しなくとも、輸入物価の下落により、国民が恩恵を受けるという点で有利という主張もある。また賃金抑制策をとった1999年から2007年までのドイツでは、インフレ調整後の実質賃金はわずかに低下し、内需は年率0.6%の伸びにとどまったが、ドイツ経済は輸出によって成長した。ただこれも、他国が賃金抑制策を取らなかった、という面もある。他国も競争的に賃金抑制策を取れば、互いの内需停滞を招き、ドイツの輸出による成長もかなり困難であった。
※この「賃金抑制策」の解説は、「競争力」の解説の一部です。
「賃金抑制策」を含む「競争力」の記事については、「競争力」の概要を参照ください。
「賃金抑制策」の例文・使い方・用例・文例
- 賃金抑制策
- 賃金抑制策.
- 賃金抑制策のページへのリンク