調音位置素性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/22 21:44 UTC 版)
調音位置素性 (place feature) は調音位置を表す一価の素性である。それぞれ、付属する二値的素性によってさらに細かく区別される。 唇音性 [labial] [labial]の音は調音に唇が関わる。円唇性 [±round] [+round]の音は唇の丸めを伴う。円唇母音や唇音化した子音などは[+round]である。 舌頂性 [coronal] [cor]の音では舌先を持ち上げて調音が行なわれる。前方性 [±anterior] [+ant]の音は歯茎の境目よりも前で調音され、[−ant]の音は後ろで調音される。歯音、歯茎音は[+ant]、後部歯茎音、そり舌音は[−ant]である。 広域性 [±distributed] [+distr]の音は声道の狭窄が比較的広範囲にわたって存在するが、[−distr]の音はそうではない。舌端音は[+distr]、舌尖音は[−distr]である。歯音は舌が歯茎にも接近するので[+distr]である。そり舌音は[−distr]である。 舌背性 [dorsal] 調音に舌背が関わる。[ç]、軟口蓋音、口蓋垂音、母音などは[dorsal]である。高段性 [±high] [+high]の音は舌背が口蓋に近い位置にあり、[−high]はそうではない。狭母音や軟口蓋音は[+high]、広母音や口蓋垂音などは[−high]である。 低段性 [±low] [+low]の音は舌背が低い位置にあり、[−high]はそうではない。広母音は[+low]である。 後舌性 [±back] [+back]の音は舌が中舌あるいは後舌の位置にあり、[−back]は前舌の位置にある。軟口蓋音や後舌母音は[+back]、[ç]や前舌母音は[−back]である。 緊張性 [±tense] [+tense]の母音[i, y, u]などは、対応する[−tense]の母音[ɪ, ʏ, ʊ]などにくらべて、口蓋に近い位置で調音される。 前方舌根性 [±advanced tongue root; ATR] [+ATR]の母音[e, o, u]などは、対応する[−ATR]の母音[ɛ, ɔ, ʊ]などにくらべて舌根が前寄りの位置にあり、咽頭を広げて調音される。 後方舌根性 [±retracted tongue root; RTR] [+RTR]の母音[ɪ, ɔ, ʊ]などは、対応する[−RTR]の母音[i, o, u]などにくらべて舌根が後寄りの位置にあり、咽頭を狭めて調音される。 [±tense]、[±ATR]、[±RTR]は、音声上は異なるが同一の言語に共起することはなく、一つの素性の変種とも考えられる。 舌根性 [radical] 咽頭性 [pharyngeal] とも。舌根を用いて調音される。咽頭音などは[radical]である。
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