視点ハイアラーキー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 04:56 UTC 版)
久野(1978)は英語と日本語において「共感度」を基に視点現象を分析した。「共感度」とは、文中の指示対象(人物など)に対する話手の自己同一視化の度合であり、値0(客観描写)から値1(完全な同一視化)までのグラデーションを持つ。例えば、一人称者は二・三人称者よりも共感度が高く(発話当事者の視点ハイアラーキー)、「くれる」は与格目的語≧主語であり、「やる」は主語≧与格目的語であるとされる(授与動詞の視点ハイアラーキー)。すると、次の例文の違いが説明できる。 ×僕が太郎にお金をくれた。 ○太郎が僕にお金をくれた。 ○僕が太郎にお金をやった。 ×太郎が僕にお金をやった。 2と3は「発話当事者の視点ハイアラーキー」と「授与動詞の視点ハイアラーキー」との間で矛盾はないが、1は共感度の高い「僕」が、「くれる」にとって共感度の低い主語になっており、4は同じく共感度の高い「僕」が、「やる」にとって共感度の低い与格目的語になっているため、矛盾を来している。 以上のようなことから、次のような「視点の一貫性」という原理を提唱した。視点の一貫性:単一の文は、共感度関係に論理的矛盾を含んでいてはいけない。
※この「視点ハイアラーキー」の解説は、「視点」の解説の一部です。
「視点ハイアラーキー」を含む「視点」の記事については、「視点」の概要を参照ください。
- 視点ハイアラーキーのページへのリンク