裸リンパ球症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/10 07:49 UTC 版)
「MHCクラスII分子」の記事における「裸リンパ球症候群」の解説
裸リンパ球症候群(英語版)とも呼ばれるMHCクラスII欠損症の1つのタイプは、MHCクラスII遺伝子の発現を調節する転写因子をコードする遺伝子の変異による疾患である。これは、CD8細胞とB細胞の両方が正常レベルで存在していても、CD4 T細胞と一部の免疫グロブリンのアイソタイプの枯渇をもたらす。欠損したMHCクラスII分子は、T細胞に抗原を提示することができず、T細胞を適切に活性化することができない。すると、T細胞は増殖できなくなり、通常は免疫反応に参加するサイトカインを分泌する。MHCクラスII分子の欠損は、T細胞の活性化と増殖に影響を与えるだけでなく、B細胞を含む免疫応答カスケード(連鎖)の残りの部分にも影響を与える。そのため、このようにT細胞の数が減少した状態では、T細胞が相互作用してB細胞を活性化することができなくなる。通常、B細胞が活性化されると、B細胞は分裂、増殖、分化するが、その中には、抗体を産生する役割を担う形質細胞への分化も含まれている。しかし、MHCクラスII分子の欠乏があると、B細胞が活性化されず、形質細胞に分化できないため、期待通りの働きができない抗体が欠乏する。現在の治療法は骨髄移植しかないが、これでも病気を治すことはできず、ほとんどの患者は10歳を過ぎても生きていない。
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