行為と責任能力の同時存在緩和構成(責任遡及アプローチ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 06:43 UTC 版)
「原因において自由な行為」の記事における「行為と責任能力の同時存在緩和構成(責任遡及アプローチ)」の解説
これに対して、有力説は、行為と責任能力の同時存在の原則を緩和して考え、責任能力ある状態での意思決定に基づいて原因行為がなされ、この「自由な意思決定に基づいて結果行為がなされた」と評価できるときには、結果行為を実行行為として完全な責任を問えるとする。 責任主義は行為と責任の同時存在を要求するが、責任の本質は、行為者人格に対する道義的非難であり、責任能力ある状態で原因行為がなされれば、その結果については道義的非難に値するといえ、原因行為と責任能力が同時に存在すれば責任を問えると考えるのである。この立場では、心神耗弱の場合でも同様に責任を問えることになる。この説に対しては、そもそも行為と責任能力の同時存在の原則を修正してしまう点について強い批判がある。 なお、間接正犯否定説を前提に原因において自由な行為を否定する見解もあり、そのような見解からは前述の事例において刑法39条が適用されることになる。 ちなみに、「原因において自由な行為」の通説からの説明(構成要件的アプローチ)は、責任能力以外の問題についても応用されることがあり、その例として「原因において違法な行為」(結果行為の違法性阻却が原因行為に起因する場合)や「原因において自由な不作為」(結果行為たる不作為について作為可能性がないことが原因行為に起因する場合)がある。 この見解からは、前述の二重の故意は要求されない。
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