自己株式の消却
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/02 01:08 UTC 版)
株式会社は、取得した自己株式を、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議(非設置会社の場合には取締役の決定)により、消却することができ(178条)、これを自己株式の消却(英: Cancellation of Treasury share、独: Einziehung von Aktien、独: Amortisation、仏: amortissement des actions)という。その際、決定すべき事項は次のとおり。 消却する株式の種類(種類株式を発行している場合のみ) 消却する株式数(自己株式の数を超えることは当然にできない) 効力発生日(時期を定めなければ決定時) 商法においては、自己株式の消却には(1)取締役会決議による消却(旧商法212条)、(2)資本減少の規定に従う消却(同法213条)または(3)定款の規定に基づき株主に配当すべき利益をもってする消却(同法同条)の3種類があり、消却した際に減少する資本項目は、取締役会等の決議に従うこととされていた。また、自己株式を消却した場合には、同時に授権資本枠(発行可能株式総数)を減少させることが通常とされていたため、消却株式数分だけ自己株式と授権資本枠の両方を減ずる必要があった。本来、授権資本枠は株主総会の特別決議を経て定められる「枠」であるから、消却によってこれを減らさなければならないという実務慣行に異議を唱える説もあった。会社法施行に伴い、自己株式の消却により減ぜられるのは自己株式に限定されることが明確にされ、授権資本枠を減少させる必要がなくなった(定款に一律減少させる規定がある場合は別)。また、会社法上の公開会社は、定款変更によって授権資本枠を発行済株式総数の4倍を超えて増加させてはならないとされている(113条)が、消却によって結果的に授権資本枠が発行済株式の総数の4倍を超えた場合は、同規定に反しないとされている。 上場会社の場合は取得により減少した流通株式を、消却により再流通させないことが確定するため証券市場から歓迎され、株価に一定の効果をもたらすとされている。ただし、授権資本枠に変化はないことから、単に発行可能株式の数が増加する効果を生んでいるという説も一方ではある。
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