組織と添加元素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/12/09 14:32 UTC 版)
前述のとおり、純チタンは常温では α 相を持ち、同素変態温度 885 ℃ 以上では β 相を持つ。ここに合金元素を加えると、変態温度が変化したり、α 相と β 相が同居する α+β 相が現れたりするようになる。アルミニウム、酸素、窒素、炭素を添加すると、α 相を安定させるように働く。変態温度を上昇させて、α 相の存在領域を広げる。そのため、これらの合金元素は α 相安定化元素と呼ばれる。一方、モリブデン、バナジウム、ニオブ、鉄、クロム、ニッケルを添加すると β 相を安定させるように働き、これらの合金元素は β 相安定化元素と呼ばれる。β 相安定化元素は変態温度を低下させて、β 相の存在領域を広げる。スズ、ハフニウム、ジルコニウムは中性的元素と呼ばれ、変態温度にあまり影響を与えない。 チタンと各添加元素との二成分系平衡状態図は、「全率固溶型」「α 相安定型」「β 相安定型」「β 共析型」の4つの典型に分けられる。全率固溶型を示す相手元素が中性的元素で、これらの元素量が増えても、α 相 ⇔ β 相の変態温度にあまり影響を与えない。相手元素量が増えても、α 相も β 相も状態図全域に渡って固溶体として存在する。α 相安定型の状態図を示す相手元素が α 相安定化元素で、これらの元素量が増えると、高温域へ α 相存在領域が広がる。さらには固溶限界が生じるようになり、組織が2相に分かれる。β 相安定型の状態図を示す相手元素は β 相安定化元素だが、β 相安定化元素の内のバナジウムやニオブなどが β 相安定型を示す。β 共析型の状態図を示す相手元素は、β 相安定化元素の内の鉄やクロムなどである。β 相安定型では、相手元素量が増えると β 相の存在領域が低温側へと広がり、なおかつ β 相が状態図全域に渡って固溶体として存在するようになる。β 共析型では、同じく β 相の存在領域が低温側へと広がるとともに、共析反応を起こすようになり低温側で組織が2相に分かれる。 (a) 全率固溶型(中性的元素) (b) α 相安定型(α 相安定化元素) (c) β 相安定型(β 相安定化元素) (d) β 共析型(β 相安定化元素)
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