純正_(クルアーン)とは? わかりやすく解説

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純正 (クルアーン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/23 20:25 UTC 版)

純正
الإخلاص
Al-Ikhlāṣ
アル・イフラース
純正
啓示 マッカ啓示
章題の意味 「イフラース」は無用のものを排して、純正にする意である。別名の由来は、本章が唯一なる御方章あるいは信条章とも呼ばれ、アッラー唯一性が簡明に数語のなかに要約されているためである[1]
別名 التوحيد
at-Tawḥīd
信仰ただひと筋
詳細
スーラ 第112章
アーヤ 全4節
ジュズウ 30番
語数 15語
文字数 47文字
前スーラ 棕櫚
次スーラ 黎明
純正 (クルアーン)
純正 (クルアーン)
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純正アル・イフラースアラビア語: سورة الإخلاص‎)とは、クルアーンにおける第112番目の章(スーラ)。4つの節(アーヤ)から成る非常に短い章であり、4つの節の末尾は全て「ad」で韻が踏まれている[1][2]井筒俊彦訳では「信仰ただひと筋」章となっており、井筒の弟子に当たる牧野信也も「信仰ただひと筋」章としている[3][4]。第112 - 114章の最後の3章は「ムアウウィザート」と総称される[5]

「告げよ」から始まるこの章はイスラーム教徒の信条告白として日常的に唱えられている[6]。また、エジプトでは葬儀の後などにカリーと呼ばれるクルアーン朗読の専門家を雇ってクルアーンの一部を朗誦させる習慣があるが、純正章はその際に好んで朗誦されるスーラの一つでもある[7]ハディースよるとムハンマドは純正章1つがクルアーン全体の1/3に当たると述べたとされており[8]大川周明は純正章をクルアーンの神髄だと評している[9]。この章を唱えることで得られる様々な功徳がハディースによって伝えられており、例えば第1節を50回唱えれば50年の罪が赦され、100回唱えた者はアッラーフの手で楽園に招き入れられるとされている[10]

内容

イスラームの神であるアッラーフの唯一性、絶対性を主題としている[11]。これは当時アラブ世界で広く信仰されていた多神教の考え方と真っ向から対立する考えであり、多神教信仰の中心地であったメッカにおいて布教活動をしていたムハンマドに対して、メッカの有力部族であったクライシュ族は激しく攻撃した。純正章はムハンマドに対するそのような攻撃に対抗して宣言されたイスラームの宗旨宣言の一つであるとされる[12]。また、第3節の「(神には)子もなく親もなく」という記述は、イエス・キリストを神の子とするキリスト教における三位一体の教義とイエス・キリストの神性を否定する強い批判である[13]

啓示時期

イスラーム学者であるテオドール・ネルデケは、純正章の極めて短く詩的な表現を取るという特徴からマッカ時代初期の啓示であるとしている[14]。一方でヒューバート・グリメドイツ語版は、スーラの教義面に着目して純正章をマッカ後期の啓示としているが多くの支持は得られていない[15]。クルーアン注解書であるタフスィール・アル=ジャラーラインでは、マッカ啓示あるいはマディーナ啓示であるとして啓示時期を特定していない[10]

脚注・出典

  1. ^ a b 日本ムスリム情報事務所 聖クルアーン日本語訳
  2. ^ ベル (2003) 128、164頁。
  3. ^ 井筒 (1991) 362頁。
  4. ^ 牧野 (2001) 541頁。
  5. ^ 岩波イスラーム辞典(2002)
  6. ^ ベル (2003) 182-183頁。
  7. ^ デロッシュ (2009) 105-106頁。
  8. ^ 牧野 (2001) 556-557頁。
  9. ^ 大川周明訳:古蘭(クルアーン)”. 大川周明ネット. 2013年11月10日閲覧。
  10. ^ a b アル=マハッリー、アッ=スユーティー (2006) 631頁。
  11. ^ 井筒 (2012) 140頁。
  12. ^ 井筒 (2012) 92-93頁。
  13. ^ 井筒 (1991) 68頁。
  14. ^ ベル (2003) 298-299頁。
  15. ^ ベル (2003) 301-302、331頁。

参考文献

  • 井筒俊彦『コーラン(下)』岩波書店、1958年。ISBN 4-00-338133-5 
  • 井筒俊彦『イスラーム文化』岩波書店、1991年。 ISBN 4-00-331851-X 
  • 井筒俊彦『イスラーム生誕』(改訂3版)中公文庫、2012(初版:1990)。 ISBN 4-12-204223-2 
  • 井筒俊彦『コーランを読む』岩波書店、2013 (原書:1983)。 ISBN 978-4-00-600283-1 
  • フランソワ・デロッシュ『コーラン -構造・教義・伝承』小村優太 訳、白水社、2009年。 ISBN 978-4-560-50941-8 
  • 牧野信也 訳『ハディース IV』中公文庫、2001年。 ISBN 4-12-203816-2 
  • リチャード・ベル『コーラン入門』医王秀行 訳、筑摩書房、2003年。 ISBN 4-480-08783-4 
  • ジャラール・アッ=ディーン・アル=マハッリー、ジャラール・アッ=ディーン・アッ=スユーティー『タフスィール・アル=ジャラーライン』 第三巻、中田香織 訳、中田考 監修、日本サウディアラビア協会、2006年。 

外部リンク


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