社会派の台頭
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 10:09 UTC 版)
芥川賞作家で主に歴史小説を書いていた松本清張は、『張込み』(1955)で愛読していた推理小説の世界にデビュー、『点と線』『眼の壁』『ゼロの焦点』『顔』『地方紙を買う女』他。ここに10年前の横溝の再出発時を思わせる勢いで、にわかに社会派推理小説の時代が到来する。既成作家のマンネリ化、目に余るリアリティの欠如、トリック以外が本格推理小説としておざなりな作品の氾濫などもその躍進を後押しした。密室については「老いた無形文化財」(紀田順一郎『密室論』、初出は佐藤俊名義。『宝石』1961.10掲載)と呼ぶものもあった。 とはいえ飛鳥高『疑惑の夜』『死にぞこない』、佐野洋『一本の鉛』、仁木悦子『猫は知っていた』(第3回江戸川乱歩賞)、日影丈吉『内部の真実』『善の決算』、天藤真『陽気な容疑者たち』、中井英夫『虚無への供物』(初出は塔晶夫名義)、多岐川恭『変人島風物誌』、笹沢佐保『突然の明日』、陳舜臣『方壺園』など質、量とも他の時代に引けを取るものではない。昭和30年代になって、初めて長編で多様さを見せることができたとさえ言える。
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