生物系統地理と生物保全
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 10:03 UTC 版)
「生物系統地理学」の記事における「生物系統地理と生物保全」の解説
生物系統地理学は、保全の観点から価値の高い地域を優先づけることにも役立つ。また、生物系統地理学的解析は、evolutionary significant units (ESU) を定義する上でも役立つ。ESU とは、独自性の高い地理的分布やミトコンドリアDNAパターンから定義される保全の一単位であり、種のレベルの下位構造にあたる。 例えば、北アメリカ東部のアパラチア山脈の洞窟に生息するザリガニを扱った2005年の研究では、地理的分布の調査に加えて系統学的解析を加えることが、保全の優先順位を決めることにどのように役立つかをはっきりと示している。生物系統地理学的なアプローチを用いることによって、著者達は、一種だと思われていた広域分布種内に隠れた種の構造を見出した。これは、両方の血統が保護を受けるべきであることを保証し、そのような保全上の決定が今や可能となっている。この研究のような結果というのは、生物系統地理学的研究の成果としては珍しいものではない。 同じく、アパラチア山脈のオナガサンショウウオ属 ( Eurycea ) のサンショウウオの研究では、そのグループの現在の分類が種多様性を著しく過小評価していることを明らかにした。著者たちはまた、生物地理学的な多様性パターンが、歴史的な(現在よりも過去の)排水路のつながり方に関連付けられることも示した。この結果は、地域ごとの排水路のパターンの大きな転換が、これらのサンショウウオの多様性の生成において重要な働きをしていることを示唆している。 上記で述べたように、生物系統地理的な構造の詳細を理解することにより、保全において優先順位の高い地域を情報に基づいて選択すること(インフォームドチョイス)が認められるようになるだろう。
※この「生物系統地理と生物保全」の解説は、「生物系統地理学」の解説の一部です。
「生物系統地理と生物保全」を含む「生物系統地理学」の記事については、「生物系統地理学」の概要を参照ください。
- 生物系統地理と生物保全のページへのリンク