無機化合物への配位子の脱着
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 23:12 UTC 版)
「化学平衡」の記事における「無機化合物への配位子の脱着」の解説
塩化コバルト(II) (CoCl2) は、水を脱着してその色を変わることでよく知られる化合物である。この塩はアンモニアを配位子として可逆的に脱着することもできる(下式)。 CoCl 2 ⋅ 2 NH 3 ( solid ) + 4 NH 3 ( gas ) ↽ − − ⇀ CoCl 2 ⋅ 6 NH 3 ( solid ) {\displaystyle {\ce {CoCl2 . 2NH3(solid) + 4NH3(gas) <=> CoCl2 . 6NH3(solid)}}} ここで温度とアンモニアの圧力を制御しながらコバルト塩の重量を測定することで、上式の変換率およびその時間変化を評価できる。Ternan らの詳細な検討によると、一定(例: 104 kPa)の圧力の雰囲気下にコバルト塩を置き系の温度をゆっくり昇降させると、高温側では軽い CoCl2·2NH3 が、低温側では重い CoCl2·6NH3 が優位となる。このとき塩の重量と温度変化をプロットすると、昇温時と降温時でプロット曲線が重ならないヒステリシスがあらわれた。もしも平衡状態までに達する時間が十分に短ければ昇/降温時の 2 本のプロット曲線は重なった形で観測されるだろうから、今回の系でヒステリシスが観測されたということは、アンモニアの脱着に遅い反応が付随すること、すなわち、結晶格子の拡大や収縮がともなっていることを示している。ヒステリシスは昇降のサイクルに数十時間かけるような条件でも起こったことなどから、上の式が平衡に達するために必要な時間は 100 ないし 1000 時間程度ではないかと見積もられた。この実験では、固-気平衡反応が平衡状態へ到達するまでの過程において、反応式の見かけによらず多くの要因が重なりときには非常に長い時間となることが示されている。
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