温度による平衡の移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/01 02:42 UTC 版)
「ルシャトリエの原理」の記事における「温度による平衡の移動」の解説
例として N 2 + 3 H 2 ⟶ 2 N H 3 + 92.2 k J {\displaystyle {\rm {N_{2}+3H_{2}\longrightarrow 2NH_{3}+92.2kJ}}} の反応について考える。 平衡状態 N 2 + 3 H 2 ⇄ 2 N H 3 {\displaystyle \mathrm {N_{2}+3H_{2}} \rightleftarrows \mathrm {2NH_{3}} } の平衡定数 K はそれぞれの化学種Aの分圧(より厳密にはフガシティー)を PA とすれば K = P N H 3 2 P N 2 ⋅ P H 2 3 {\displaystyle K={\frac {{P_{\rm {NH_{3}}}}^{2}}{P_{\rm {N_{2}}}\cdot {P_{\rm {H_{2}}}}^{3}}}} と表される。 また、平衡定数 K は反応ギブズエネルギーΔG との間に ln K = − Δ G R T {\displaystyle \ln K=-{\frac {\Delta G}{RT}}} の関係があり(R は気体定数、T は絶対温度)、さらに反応エンタルピーΔH、反応エントロピーΔS と Δ G T = Δ H T − Δ S {\displaystyle {\frac {\Delta G}{T}}={\frac {\Delta H}{T}}-\Delta S} の関係もある。そこで反応エンタルピー、反応エントロピーは温度によらず一定とすると ∂ ln K ∂ T = Δ H R T 2 {\displaystyle {\frac {\partial \ln K}{\partial T}}={\frac {\Delta H}{RT^{2}}}} となる。この式をファントホッフの式という。反応温度による平衡の移動についてはファント・ホッフによってル・シャトリエよりも早く平衡移動の原理として考察されていた。この式によれば反応エンタルピーが正(吸熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は増加し、生成物への移行がより有利になる。逆に反応エンタルピーが負(発熱反応)ならば、反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、原料への逆反応がより有利になる。 アンモニアの生成反応は発熱反応、すなわち反応エンタルピーは負の反応である。よってファントホッフの式により反応温度が上昇すると平衡定数は減少し、吸熱方向の反応である原料への逆反応が有利となる。このようにしてルシャトリエの原理が説明できる。 なお、一定容積下で温度を変化させた場合には全圧が変化するため、それによる平衡の移動と競合することになりルシャトリエの原理によって平衡の移動する方向を予想できなくなることがある。
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