海洋の地衡流の計算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/04 09:28 UTC 版)
大気の場合積分を開始する海面気圧が比較的容易に観測できるのに対し、海底の圧力変動を観測するのは容易ではない。そのため海洋の地衡流を計算するには 海底圧力計を設置した上で、温度塩分の観測をする。 海底に近くなるほど流れは弱くなるため、ある深さで流れが零になると仮定してそこからジオポテンシャルを計算する。 温度あるいは塩分の移流の式を同時に満たすように、海底での流速を推定する。 ある領域を囲むように温度塩分断面観測をおこない、領域内の流量保存則を用いる。 温度塩分と同時に、何点かで流速も測定し、それによって補正を行う。 などの方法が行われる。 海面高度は、人工衛星(TOPEX/ポセイドン、ジェイソン1など)に搭載した海面高度計で広範囲に精密な観測が可能であるが、ここから厳密に地衡流を求めることは出来ない。第一に、上記のとおり海水の密度は温度と変分によって変動するためである。第二に、仮にこの変動が無視できて海水密度一様と仮定しても、平均海面(ジオイド)が求まらないという問題がある。重力加速度 g が微小ながら場所によって変動するため、同じ深さであっても同じ海底圧力とは限らないのである。しかし、平均海面からのずれは数十センチメートル以下の量で密度と重力加速度の変動は無視できる。平均海面に等ジオポンテシャル面 Φ = 0 をおくと、 Φ = g Δ z {\displaystyle \Phi =g\Delta z} と近似される。Δ z は、海面高度計で測定された海面高度(平均海面からのずれ)である。これにより求められた地衡流は、海洋表面近くの地衡流の変動である。
※この「海洋の地衡流の計算」の解説は、「地衡風」の解説の一部です。
「海洋の地衡流の計算」を含む「地衡風」の記事については、「地衡風」の概要を参照ください。
- 海洋の地衡流の計算のページへのリンク