活性錯合体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/31 09:28 UTC 版)
英: activated complex、活性複合体とも)は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって「ポテンシャルエネルギー面の鞍部(鞍点)のあるいはその近傍の任意の限りなく小さな領域に対応する原子の集団」と定義される[1]。言い換えると、結合が切断して、新たな結合が形成されている間に持続する化学反応における中間構造の一群を指す。したがって、1つの明確な状態ではなく、むしろ原子の一群が明確に定義された生成物と反応物との間にある原子の一群が通過する幅広い過渡的な配置を表わす。
(かっせいさくごうたい、活性錯合体理論とも呼ばれる遷移状態理論(TST)の対象であり、TSTは標準生成ギブズ自由エネルギーΔG°‡を持つ明確な中間体を通過する反応の速度論を研究する[2]。ダブルダガー記号によって表わされる状態は遷移状態と呼ばれ、特定の反応の反応物または生成物のいずれかを形成する等しい確率を有する厳密な配置を表わす[3]。
活性錯合体はしばしば遷移状態と混同され、多くの教科書において意味の区別なく使われている。しかしながら、遷移状態が反応中の原子の最高ポテンシャルエネルギー配置のみを表わしているのに対して、活性錯合体が反応物から生成物への変換中に原子が通過する遷移状態近傍の幅広い配置を指す、という点で両者は異なっている。これは反応座標の観点から視覚化することができる。遷移状態は反応座標図の頂上での分子配置であるのに対して、活性錯合体は極大点近傍のいずれかの点をも指しうる。活性錯合体は部分的に反応物の、部分的に生成物の性質を有する[4]。
出典
- ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版: (2006-) "Activated complex".
- ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版: (2006-) "Transition State Theory".
- ^ IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997). オンライン版: (2006-) "Transition State".
- ^ Peter Atkins and Julio de Paula, Physical Chemistry (8th ed., W.H. Freeman 2006), p.809 ISBN 0-7167-8759-8
関連項目
外部リンク
活性錯合体
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詳細は「活性錯合体」を参照 活性錯合体とは遷移状態理論においてモデル化された、化学反応の素反応(過程)において原系(反応物側の系)と生成系(生成物側の系)へと連続的に変化する分子(または原子)の複合体(一時的な結びつきを持った集合体)である。反応中間体や遷移状態と呼ばれる状態がこれにあたる。 活性錯合体では結合あるいは乖離する分子(または原子)間の距離は様々に変化するが、その距離の変化に応じて、様々なポテンシャルエネルギーの値をとる。ポテンシャルエネルギーは厳密にはエントロピー変化を考慮して、ギブス自由エネルギー(定圧過程の場合)あるいはヘルムホルツ自由エネルギー(定積の場合)で表される。 一般に反応の遷移状態を表現する原子配置(内部座標)とポテンシャルエネルギーの関係を表したポテンシャルエネルギー曲面において、化学反応は原系から生成系へとポテンシャルエネルギーが局所的に最小となる経路を通過する。この反応が通るポテンシャルエネルギー曲面の経路が反応座標であり、狭義では活性錯合体は反応座標におけるポテンシャルエネルギーの極大点の状態を指す。
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