水中のカビ的生物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 01:18 UTC 版)
一般的に、カビは陸上の生物である。その種の大部分は陸生であり、湿ったところが好きとは言っても水中で育つとも限らず、胞子は空中でしか作らない、というものも多い。キノコも水中性のものはほとんどないから、菌類の大部分は陸上で進化したものと考えられる。 しかし、水中生活するカビの仲間も存在し、また菌類ではないがカビ様の姿と生活様式を持つ生物もまた存在する。それらは肉眼で見る事が出来るものもあり、より小さなものもある。それらは水中にある動植物遺体や落葉落枝、その他の有機物を基質として菌糸を伸ばして生活する。そのような、水中生活をする、カビと見なしうる生物には以下のようなものがある。 外見的には、水中の動植物遺体に生えて、白っぽい綿毛のような姿に成長するものを指してこう呼ぶことが多い。このような形で見られるものは、卵菌類のミズカビ目 (saprolegniales) にふくまれるものであることが多い。ミズカビという和名をもつSaprolegnia属の各種や、それに近縁なワタカビ属(Achlya)など、いずれもよく似た外見をもつ。非常に太くて真っ直ぐな菌糸なので、肉眼でも数えられるほどである。よく成長すれば1cmくらいに伸びる。先端に遊走子のうを生じて多量の遊走子を出す。遊走子のうはやや不透明に、肉眼でも区別できる。本項ではこれについて記す。 フシミズカビ目のフシミズカビ・オオギミズカビ目のオオギミズカビもよく菌糸を発達させる。 フハイカビ目フハイカビ属 (Pythium) の種もよく出現するが、やや菌糸が細いため、もやもやした感じになり、菌糸を数えるほどにはよく見えない。 これらは、いずれも隔壁のない管状の菌糸の先端部の袋の中に、遊走子を形成して繁殖する。そのため、かつては鞭毛菌門にまとめて、もっとも原始的な菌類であると考えられていた。しかし、最近では菌類とは系統を異にするものであることがわかっており、これらは偽菌類と呼ばれることもある。 菌界のツボカビ門にも、菌糸を発達させ、ミズカビのような姿を持つものがある。カワリミズカビ (Allomyces) はその例であり、繁殖している様子は、肉眼的にはミズカビとほぼ同じである。ただし、卵菌類より発生する頻度が低く、見かけることは少ない。同じくツボカビ門のサヤミドロモドキもよく発達した菌糸を形成する。 水中生活するカビとしては、水生不完全菌というものもある。これは、主として水中に沈んだ落ち葉に発生するが、ミズカビより遙かに細い菌糸を作り、胞子も小さいため、肉眼では確認が難しい。場合によっては、水中の落ち葉の表面に生じるもやもやしたものとして視認できる場合もある。水中での散布に適応した、長い枝を伸ばした分生子を作る。 なお、陸上性の菌類も、水中で菌糸を伸ばすことがあるので、ミズカビ的に見えることがある。卵菌類のように太い菌糸は作らない。
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