民具の価値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/06 04:28 UTC 版)
古来、人びとは漁撈、狩猟、山樵、農耕などの生業に従事して生計を立ててきたが、苦しいことも多かったであろうその生活のなかで、生きるための知恵を具体的に示しているのが民具である。民具には「生きるのがやっと」という最低生活のなかで工夫され、機能性を追求してきたものが多く、それが、長い年月をかけて繰り返され、伝承されてきたものである。そこには堅牢な合理性が集約されている。 もちろん、なかには現代人からみて芸術的なものがないとは言えない。しかし、それは民具にとって必ずしも必要なのではなく、あくまでも使い勝手が主であり、芸術性や装飾性は副次的なものである。民具のなかに、たまたま素朴な美しさが見いだされたとしても、それは「実用の美」というべきものであり、確固とした実用性の上に芸術性が付け加えられたものである。 たとえば、布を補修し、補強するための刺し子の模様は、そのまま装飾ともなり得るものである。また、蓑や背中当てなどにみられる細かい縄の編み目は、背中の保護とともに通気性や保温性を高めるためのものであるが、一方では多分に飾りとしての意味も持っている。しかし、そうした装飾性も、追い求めた結果というよりは、期せずしてにじみでたものである。民具の価値は稀少性や美しさ、おもしろさにあるのではなく、あくまでも実用性にある。系統だった研究と収集が求められるゆえんである。
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