打球 (野球)とは? わかりやすく解説

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打球 (野球)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2010/03/24 07:00 UTC 版)

打球とは、投球に対してバットで打者が打ったボールを指す。フェアボールとファウルボールの2つに、打球は分類される。但し、ファウルチップ反則打球は正規の打球から除かれる。

目次

概要

基本的に、バットに投球が触れると全て打球になる。従って、以下の4つは全て正規の打球である。

  • 安打や進塁打を狙い、投球を打ち返す意志をもって打者がバットに当てたもの。
  • ハーフスイングで止まった(見送った)バットに投球が触れたもの。
  • 打者の身体に向かって投球が飛んで来て、身の危険から反射的にバットで跳ね返したもの。
  • グリップエンドに投球が触れたもの。

正規の打球となったものを野手が捕らえれば、打者はアウトになり塁上の走者はリタッチの義務を負う。野手が捕らえなければ、所定の規則と審判員の判定に従ってフェアボールとファウルボールの何れかに分類される。

フェアとファウル

捕球の有無に関わらず、打球はフェアとファウルに完全分類され、互いに相補的である。特に打球が捕球されなかった場合、この概念の本質が顕著に現れる。

フェアは投球を前方に打ち返す事の出来た打球で、価値有る打球と考えられる。これを打つと、以下の様になる。

  • 全てのプレイが有効でボールインプレイが続けられる。
  • 打者は走者になれる。
  • 打球が野手の守備行為の対象となる。

ファウルは投球を前方に打ち返し切れてない打球で、価値無い打球と考えられる。これを打つと、以下の様になる。

投球がバットに当たってからフェアかファウルかが確定するには、一般的に相応の時間を要する。一瞬で決まるものも有るが、長いものだとバットに当たってから5秒以上経過してもフェアかファウルかが決まらない。フェアとファウルの厳密な分類は相当複雑なので、順を追って記述する。

ファウルライン

野球のフィールドは本塁と一塁を結ぶ線、本塁と三塁を結ぶ線の2本のファウルラインで区切られている。フィールド上に描かれた線の中で、ファウルラインは最も重要と考えられる。ファウルライン(及び、鉛直の仮想壁)はフェアとファウルの境界線(壁)である。

捕手以外の守備側の選手や二塁ベースが存在する内側の地域をフェアゾーン(フェアグラウンド)、それ以外の外側の地域をファウルゾーン(ファウルグラウンド)と呼ぶ。ファウルライン上はフェアゾーンである。

フェアの定義

フェアは次の様な打球をいう。

  1. 飛球の状態でフェンスを越えていくときに、フェアゾーンの上空を通過したもの(これを本塁打という)。
  2. フェアゾーン内(フェアゾーンの上空も含む)で、プレーヤー、審判員に触れたもの(この場合、触れた瞬間のボールの位置を判断基準とする。プレーヤーや審判員の位置は無関係である。)。
  3. 最初に落下した地点が、一・二塁を結ぶ線上、二・三塁を結ぶ線上、もしくは、一塁または三塁を越えたフェアゾーンであるもの。
  4. 一塁・二塁・三塁に当たったもの。
  5. 一塁または三塁をバウンドしながら外野へ越えていく際に、一塁または三塁よりも内側を通過したもの。
  6. 最終的に、本塁と一塁または三塁の間のフェアゾーンに止まったもの(ボールが外野に到達しなければ、ボールが動いている間はフェアなのかファウルなのか確定しない。)。

以上の定義は公認野球規則2.25に基づいている。

ファウルの定義

ファウルは次の様な打球をいう。

  1. バッタースボックスを出ていない打者の身体や着衣に触れたもの(これを自打球という)。或は、打者が持っているバットに触れたもの。
  2. ファウルゾーン内(ファウルゾーンの上空も含む)で、野手や走者などのプレーヤー、審判員、地面以外のもの(フェンスやネットはもちろん、捕手が外したマスクや打者が投げ捨てたバット、球審が誤って落とした箒なども含む)に触れたもの(この場合、触れた瞬間のボールの位置を判断基準とする。プレーヤーや審判員等の位置は無関係である。)。
  3. 最初に落下した地点が、一塁または三塁を越えたファウルゾーンであるもの。
  4. 一塁または三塁をバウンドしながら外野へ越えていく際に、一塁または三塁よりも外側を通過したもの。
  5. 最終的に、本塁と一塁または三塁の間のファウルゾーンに止まったもの(ボールが外野に到達しなければ、ボールが動いている間はフェアなのかファウルなのか確定しない)。

以上の定義は公認野球規則2.32に基づいている。

注意点

打球が投手板に当たり跳ね返って内野のファウルゾーンに止まった場合はファウルである。


バント等で本塁と三塁の間のフェアゾーンでバウンドしても、そのまま静止するか、三塁を越えるか、プレーヤーなどに触れない限りフェアとはならない。従って、内野安打や犠打を阻止する為に三塁手はしばしば守備を見送り打球がファウルゾーンに達するのを見届ける。但し、ライン際の三塁ゴロに対し、三塁手は外側に息を吹き掛けたり足で地面を削って溝を作ってはいけない。こういった打球の進路を故意に変える行為は反則で、打者と塁上の走者には安全進塁権1個が与えられる(出典=プロ野球審判が解説プロ野球「意外なルール」100!岡田功(宝島社)76ページ) 。


一度本塁と一塁または三塁の間のファウルゾーンでバウンドしても、そのまま静止するか、一塁または三塁を越えるか、プレーヤーなどに触れない限りファウルとはならない。このためバウンドが変わってフェアボールになることが稀にある。従ってそのような疑いのある緩い打球が転がった場合はファウルゾーンに入った時点ですぐに触れるのが守備側の原則である。


フェアゾーン内で捕手が外したマスクや打者が投げ捨てたバットなど、地面以外のものに打球が当たった場合はボールインプレイである(ただし、打者が打球の進路を故意に変える意図があったと審判員が判断すれば、打者は守備妨害でアウトになる)。

判定

審判員がフェアの判定を行う際は、人差し指1本または手のひらでフェアゾーンの方を指し示すジェスチャーか、セーフのジェスチャーをフェアグラウンドへ向けて行う。現在は人差し指1本でフェアゾーンを指し示すジェスチャーで判定を行うのが一般的であり、セーフのジェスチャーでの判定はあまり行われなくなったが、野手がフェアボールの飛球を直接捕球できなかった場合(直接捕球かどうか疑わしい時のみ)はセーフのジェスチャーをして「ノーキャッチ」と宣告する。なお「ノーキャッチ」は「フェア」の宣告も兼ねている。またライン際フェアグラウンド側フェンスダイレクトの打球、ライン際フェアグラウンドに落ちた打球などは、両手でジェスチャーを行うことがある。

審判員がファウルボールの判定を行う際は「ファウルボール」と発声し、両手を上方に広げたジェスチャーを行う。


以前はジェスチャーとともに発声していたが、現在審判員がフェアの判定に限り、発声せずにジェスチャーのみでジャッジを行うこととされている。これは、「フェア」・「ファウル」共に最初の音が“F”から始まるため、審判員が発声した瞬間にはフェアボールであるかファウルボールであるかを野手が判断できない、または聞き間違えることがあるからとされている。そのため、審判員が無発声(ノーボイス)の場合はフェアボール、発声した場合はファウルボールとするようになった。

打球の価値

一般的に考えて、価値の有る打球はフェアである。フェアを実現するには、投球を前方に打ち返さなければいけない。その中で最も価値の有る打球は、十分な飛距離をもってインフライトで外野観客席に入る様なものである。本塁が与えられるだけでなく、大きなアーチ状の軌跡に独特の迫力や美しさが有り、しばしば観客を感動させる。

その他、野手の居ない場所に打球を運びボールが野手の手に付いていない時間の長い打球は価値が高いとされる。この様な打球は安打や進塁打になり得る。

打者はファウルを何本打とうが、そのこと自体によりアウトになることはない(都市伝説に存在するが、「36本打つとアウトになる」などのことはない)。仮にアウトになれば、打者に不利過ぎるルールといえる。何故なら、投球をバットに当てて野手の居ない場所に打球を運ぶプレイを適切に評価できていないからである。しかし、2ストライク後にバント(スリーバントと呼ばれる)した打球がファウルとなった場合は第3ストライクが宣告され、打者は三振でアウトになる。このルールが追加される前は、意図的にバントでファウルを繰り返し打ち、相手の投手を疲れさせ降板させようとする戦法が広く使われていた。現在でも投手に多く投球させるために「カット」と称して打者にとって不利な球筋の投球に対して当てるだけのバッティングを行いわざとファウルにする戦術は行われているが、バントに比べれば難しい行為である。

ただし、スローピッチソフトボールにおいては2ストライク後のファウルは3ストライクとなり、三振でアウトになる。

観客席に入った打球

日本プロ野球の1軍公式戦で観客席に入った打球は全球場で観客が持ち帰れる。しかし、かつてはファウルボールを持ち帰れず景品と交換して返却するか、あるいはただ返却する制度が一般的だった。2軍戦やアマチュア野球では、ファウルボールを最寄の係員に返却するのが基本となっている。阪神甲子園球場での選抜高等学校野球大会全国高等学校野球選手権大会では持ち帰れる。

脚注


「打球 (野球)」の例文・使い方・用例・文例

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