形式的証拠力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2012/09/23 06:44 UTC 版)
書証を事実認定に用いるためには、その記載内容が当該事実の証明に役立つこと(実質的証拠力)が必要であるが、その前提として、文書が真正に成立したものであること(形式的証拠力)が必要である(民事訴訟法228条1項)。文書が真正に成立したとは、文書が、ある特定人の意思に基づいて作成されたこと(偽造でないこと)をいう。 公文書については、真正に成立したものと推定される(民事訴訟法228条2項)。 一方、私文書については、本人が署名又は押印しているときは、真正に成立したものと推定される(同条4項)。さらに、判例上、印影が本人の印章(印鑑)によって押されたものである場合は、本人の意思に基づいて押印されたものと推定される(最判昭和39年5月12日民集18巻4号597頁)。したがって、本人の印章と文書の印影が一致すれば、本人の意思に基づいて押印されたものと推定され、さらにその結果文書全体が本人の意思に基づいて作成されたものと推定されることになる。これを二段の推定(にだんのすいてい)という。 そのため、人に預けていた印章を無断で契約書に押されたり、保管していた印章を他人に無断で持ち出されて契約書に押されてしまった場合に、自分がその契約書を作成するつもりがなかったと主張するためには、この二段の推定を覆さなければならないため、その立証には大きな負担がかかることが多い。
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