帽子屋のなぞなぞ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 11:18 UTC 版)
「狂ったお茶会」の初めのほうで、帽子屋はアリスに「カラスと書き物机が似ているのはなぜか」(“Why is a raven like a writing desk?”) というなぞなぞを投げかける。アリスは、しばらく考えても答えがわからなかったので降参する。しかし、帽子屋や三月ウサギは、自分たちにもわからないと答え、結局答えのない問いかけであったということがわかる。この答えのないなぞなぞは、ヴィクトリア朝の家庭の中でその答えをめぐってしばしば話題になった。1896年の『不思議の国のアリス』の版のキャロルによる序文には、後から思いついた答えとして、以下の回答が付け加えられた。 “Because it can produce a few notes, though they are very flat; and it is nevar put with the wrong end in front!” (訳)なぜならどちらも非常に単調/平板 (flat) ながらに鳴き声/書き付け (notes) を生み出す。それに決して (nevar) 前後を取り違えたりしない! ここで「決して」の正しい綴りは “never” であるが “nevar” とするとちょうど “raven”(カラス)と逆の綴りになる。しかし、このキャロルのウィットは当時編集者に理解されず、“never” の綴りに直されて印刷されてしまった(キャロルはこれを訂正する機会のないまま間もなく亡くなっている。このキャロルの本来の綴りは、1976年になってデニス・クラッチによって発見された。)。 キャロルが答えを付けた後も、このなぞなぞに対して、さまざまな人物が答えを考案している。たとえば、アメリカのパズル専門家サム・ロイドは、「なぜなら、どちらもそれに就いて/着いてポーが書いたから」(“Because Poe wrote on both” エドガー・アラン・ポーが「大鴉」を書いていることにちなむ)、「なぜなら、どちらにもスティール (steel/steal) が入っているから」(机の脚にスチール (steel) が入っていることと、カラス (raven) という単語に奪う・盗む (steal) の意味が含まれることとをかけている)など複数の答えを提示している。 オルダス・ハクスリーは、このなぞなぞに対し、“Because there is a B in both and an N in neither.” という答えを提示している。この文は「どちらも B を含み(実際には含んでいない)、どちらにも N が含まれない(実際には含まれている)」という意味にも「both(どちらも)という単語には b が入っており、neither(どちらにもない)という単語には n が入っている」という意味にも読める。また、ハックスリーは、「人間の形而上学的な問いというものはいずれもこの帽子屋のなぞなぞのようにナンセンスなもので、実際にはどれも現実についてではなく、言語についての問いにすぎない」と記している。
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