富井政章の見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 14:31 UTC 版)
「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」の記事における「富井政章の見解」の解説
また、貴族院議員であり商法典の整備に携わった東京帝国大学法学博士の富井政章は委員会にて、政府見解が重視する安全性と本案が重視する利便性の折衷案として、新たに修正する案を提出した。この修正案は、商法第148条及び第205条の場合は、花押をもって署名に代えることができるという内容であった。修正案の理由として彼は、署名よりも花押の方が多少利便性が向上されるとし、また安全性に関しても、自筆にはかわらないため、政府見解と矛盾することはないと説明した。 しかしこの修正案は、他の委員より批判された。批判の理由として大まかに2点の事項があげられる。 第一に、花押の普及度である。花押は、当時においても花押を有する者自体極めて少い状態であり、花押が盛んであった時代においてすら、使用範囲は武士階級以上の者に限定されていた。委員等は、仮にこの修正案通り花押を認めたとしても、このような事実が存在するため、実行性に欠けると批判した。 第二に、花押の安全性である。江戸時代の花押はこれを銅版に彫刻し使用していたという事実が存在しており、花押自体必ずしも自筆のものとは限定されないものである。この場合、印影との性質的な相違は見当たらず、修正案提出者がいう安全性が確保されないおそれがあると批判された。 これらのことから、委員会での採決を前に本人により当該修正案は撤回されることとなった。
※この「富井政章の見解」の解説は、「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」の解説の一部です。
「富井政章の見解」を含む「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」の記事については、「商法中署名スヘキ場合ニ関スル法律」の概要を参照ください。
- 富井政章の見解のページへのリンク