実現できる物理系
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/04 05:25 UTC 版)
負の温度の平衡分布が実現するとすれば、「最もエネルギーの高い状態」が最も高確率で実現されなければならない。 しかし、いくらでも分子運動が激しい状態を考えうる気体・液体や、いくらでも多くの数の光子、フォノンなどが存在する状態を考えうる電磁場、格子振動などの系ではそもそも「最もエネルギーの高い状態」を考えることができない(無理にカノニカル分布の式に負の温度を代入しても、分配関数が発散してしまうのは目に見えている)。したがって、負の温度というのはこれらの系で実現することはできない。 一方で、有限の大きさをもつスピン系など、系が取りうる状態の数そのものが限られている場合においては、このような平衡分布を考えても特に問題はない。しかしこのような系には熱力学極限を取ることが出来ないので、実際の実験で実現できるのは「緩和の遅い準安定な系(=非平衡状態にある系)」だけである。ちなみにスピン系のモデルで記述されるような実際の磁性体は、多量のエネルギーを注入しても負温度にはならないが、これはエネルギーが高くなると(スピン系のモデルでは無視しているような)別の励起スペクトルが現れるためである。
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