妖怪の批判的研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 01:24 UTC 版)
哲学者として著名な円了であるが、いわゆる妖怪研究を批判的(critical)に行った人物としても知られる。 円了は『妖怪学』『妖怪学講義』などでそれぞれの妖怪についての考察を深め、当時の科学では解明できない妖怪を「真怪」、自然現象によって実際に発生する妖怪を「仮怪」、誤認や恐怖感など心理的要因によって生まれてくる妖怪を「誤怪」、人が人為的に引き起こした妖怪を「偽怪」と分類し、例えば仮怪を研究することは自然科学を解明することであると考え、妖怪研究は人類の科学の発展に寄与するものという考えに至った。 こうした研究から、円了は「お化け博士」「妖怪博士」などと呼ばれた。彼の後の体系的な妖怪研究は、江馬務、柳田國男の登場を待つこととなる。 いわゆる「こっくりさん」(テーブル・ターニング Table-turning)の仕組みを科学的に説明した。 円了によれば、妖怪は (1) 実怪と (2) 虚怪に、 (1) 実怪はさらに (A) 真怪と (B) 仮怪に、 (2) 虚怪はさらに (C) 偽怪と (D) 誤怪にそれぞれ分けられるという。すなわち、 (A) 真怪は超理的妖怪であり、宇宙の万物で妖怪でないものは無く、水も小石も火も水も妖怪である。 (B) 仮怪は自然的妖怪であり、(ア)物理的妖怪(人魂や狐火など)と(イ)心理的妖怪(幽霊や憑霊など)とがある。 (C) 偽怪は人為的妖怪であり、利欲その他のために人間が作り上げた妖怪である。 (D) 誤怪は偶然的妖怪であり、たとえば暗夜に見る石地蔵(鬼)、枯尾花(幽霊)を妖怪と見るものである。世間でいう妖怪の5割は (C) 偽怪、3割が (D) 誤怪、2割が (B) 仮怪である。この3種は科学的説明ができ、 (A) 真怪の研究によって宇宙絶対の秘密が悟得できる、という。
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