多項式近似
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/22 16:46 UTC 版)
区間 [ − 1 , 1 ] {\displaystyle [-1,1]} で定義された連続関数 f {\displaystyle f} を多項式により近似することを考える。このような近似が可能であることはストーン=ワイエルシュトラスの定理によって保証されている。なお一般の区間 [ a , b ] {\displaystyle [a,b]} の場合、変数変換 x = a + b 2 + b − a 2 t {\displaystyle x={\frac {a+b}{2}}+{\frac {b-a}{2}}t} により区間 [ − 1 , 1 ] {\displaystyle [-1,1]} の問題に帰着できる。 ある多項式 p {\displaystyle p} が問題の関数 f {\displaystyle f} をどの程度「良く」近似できているのかは、区間 [ − 1 , 1 ] {\displaystyle [-1,1]} における一様ノルム ‖ p − f ‖ = max x ∈ [ − 1 , 1 ] | p ( x ) − f ( x ) | {\displaystyle \|p-f\|=\max _{x\in [-1,1]}\left|p(x)-f(x)\right|} によって表現される。例えば区間 [ a , b ] {\displaystyle [a,b]} を等間隔の n {\displaystyle n} 区間 [ x i , x i + 1 ] {\displaystyle [x_{i},x_{i+1}]} ( x i = a + ( b − a ) i / n {\displaystyle x_{i}=a+(b-a)i/n} ) に分割し、各小区間の端点 x i {\displaystyle x_{i}} での関数値 f i ( x i ) {\displaystyle f_{i}(x_{i})} のラグランジュ補間を近似多項式として採用することを考える。しばしばこの方式では区間 [ − 1 , 1 ] {\displaystyle [-1,1]} の端付近で補間多項式の値が補間点以外ではもとの関数値から大きく外れるルンゲ現象が起き、その結果一様ノルムが大きな値を取るため好ましくない。 一様ノルムの観点で最良の近似多項式がミニマックス近似多項式である。 P n {\displaystyle \mathbb {P} _{n}} を高々 n {\displaystyle n} 次の実係数多項式の全体とする。区間 [ − 1 , 1 ] {\displaystyle [-1,1]} で定義された連続関数 f {\displaystyle f} について、そのミニマックス近似多項式(英語版) ϕ n ∈ P n {\displaystyle \phi _{n}\in P_{n}} とは、任意の p ∈ P n {\displaystyle p\in P_{n}} に対して ‖ f − ϕ n ‖ ≤ ‖ f − p ‖ {\displaystyle \|f-\phi _{n}\|\leq \|f-p\|} が成立するもののことを言う。連続関数のミニマックス近似多項式は常に存在し一意であることが保証されている。チェビシェフの等振動定理によると、ミニマックス多項式はもとの関数のある n + 1 {\displaystyle n+1} 点でのラグランジュ補間に一致する。ただし、どの点で補間を行えばよいのかは関数 f {\displaystyle f} に依存する。ミニマックス近似多項式を求めるRemezのアルゴリズムが知られているものの、実際にそれを構成することは容易ではない。 実用的には関数の多項式近似にはチェビシェフ補間を用いることが多い。 n {\displaystyle n} 次のチェビシェフ補間とは、 T n + 1 ( x ) {\displaystyle T_{n+1}(x)} の n + 1 {\displaystyle n+1} 個の零点における関数値をラグランジュ補間するものである。多項式近似におけるチェビシェフ多項式の有用性は次の定理によって示される。 n ≥ 1 {\displaystyle n\geq 1} とする. 任意の実係数 n {\displaystyle n} 次モニック多項式 p ( x ) {\displaystyle p(x)} は ‖ p ‖ ≥ 2 1 − n {\displaystyle \|p\|\geq 2^{1-n}} を満足する。等号成立は p ( x ) = 2 1 − n T n ( x ) {\displaystyle p(x)=2^{1-n}T_{n}(x)} のときである. 従って n {\displaystyle n} 次のモニック多項式のうち 0 を近似する最良のものがチェビシェフ補間であると言える。この性質のため、チェビシェフ補間ではルンゲ現象は発生しない。一般にはチェビシェフ補間がミニマックス近似多項式を与えるとは限らないものの、その良い近似を与えることが期待できる。
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