塩化ウラン(VI)とは? わかりやすく解説

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六塩化ウラン

分子式Cl6U
その他の名称塩化ウラン(VI)、六塩化ウラン、Uranium hexachloride、Uranium(VI) chlorideUran(VI)hexachloride
体系名:ウラン(VI)ヘキサクロリド


塩化ウラン(VI)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/25 02:38 UTC 版)

塩化ウラン(VI)
識別情報
CAS登録番号 13763-23-0
特性
化学式 UCl6
モル質量 450.745 g/mol
外観 暗緑色結晶性固体
密度 3.600 g/cm3
融点

177 °C, 450 K, 351 °F

沸点

75 °C, 348 K, 167 °F

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

塩化ウラン(VI)または六塩化ウランは化学式 UCl6 で表されるウラン塩素化合物で、ウランの酸化数は +6である[1][2]。暗緑色の結晶性固体で、複数の波長で蛍光する。蒸気圧は100 ℃(373.15 K)で1 - 3 mmHg である[3]。塩化ウラン(VI)は室温では真空中や乾燥空気、窒素ヘリウム雰囲気中で安定である。四塩化炭素に溶ける。他のハロゲン化ウランに比べると、多少はよく知られている。

構造

塩化ウラン(VI)は点群 Oh に属する八面体構造をとる。 結晶格子のサイズは 10.95 ± 0.02Å × 6.03 ± 0.01Å で単位胞あたり3つの分子が六角形をなしている。U-Cl 間の結合長は理論的には 2.472Å であるが、X線結晶構造解析による実測値としては2.42Å が得られている[4]。隣接する塩素原子間の距離は 3.65Å である。

性質

塩化ウラン(VI)は吸湿性が高く、空気中では速やかに分解する[5]。このため、真空中か乾燥空気中で取り扱わなければならない。

熱分解

塩化ウラン(VI)は120 - 150 ℃までは安定である。塩化ウラン(VI)の固体は別の構造に転移する[6]。一方、塩化ウラン(VI)の気体は熱分解で固体の塩化ウラン(V)に変化する。この反応の活性化エネルギーは約40 kcal/mol である。

溶解度

塩化ウラン(VI)は溶媒への溶解度があまり高くない。四塩化炭素には溶けて褐色の溶液となる。臭化イソブチルやフロン (C7F16) にはわずかに溶ける[7]

溶媒 温度 (oC) 溶解度(溶媒100 g に対する UCl6 の溶解量)
四塩化炭素 - 2.64
四塩化炭素 0 4.9
四塩化炭素 20 7.8
6.6% 塩素:93.4% 四塩化炭素 - 2.4
12.5% 塩素:87.5% 四塩化炭素 - 2.23
12.5% 塩素:87.5% 四塩化炭素 0 3.98
液体塩素 - 2.20
クロロメタン - 1.16
ベンゼン 80 不溶
フロン113 45 1.83

フッ化水素との反応

塩化ウラン(VI)は無水フッ化水素酸 (HF) と室温で反応してフッ化ウラン(V)を生じる[8]

合成

塩化ウラン(VI)は四塩化炭素中で酸化ウラン(VI)(UO3) と熱した塩素を反応させることで得られる。この反応の収率は塩化ウラン(V)が存在すると高くなる[9]。酸化ウラン(VI)はまず塩化ウラン(V)となり、さらに塩素と反応して塩化ウラン(VI)となる。反応物の量にもよるが、 温度を65 - 170 ℃(理想的には 100 - 125 ℃)の範囲とすると反応が進む。反応に伴って圧力が変化するため、グローブボックスなどの気密容器中で反応させる。

第1段階:
第2段階:
全体:

また、塩化ウラン(IV)に350 ℃で塩素を反応させても得られる[10]

第1段階:
第2段階:
全体:

脚注

  1. ^ Zachariasen, W. H. (1948). “Crystal chemical studies of the 5f-series of elements. V. The crystal structure of uranium hexachloride”. Acta Crystallographica 1 (6): 285. doi:10.1107/S0365110X48000788. 
  2. ^ Taylor, J. C.; Wilson, P. W. (1974). “Neutron and X-ray powder diffraction studies of the structure of uranium hexachloride”. Acta Crystallographica Section B Structural Crystallography and Crystal Chemistry 30 (6): 1481. doi:10.1107/S0567740874005115. 
  3. ^ Van Dyke, R. E.; Evers, E. C. (1955). “Preparation of Uranium Hexachloride”. google patent: 2. 
  4. ^ Batista, E. R.; Martin, R. L.; Hay, P. J. (2004). “Density Functional Investigations of the Properties and Thermodynamics of UFn and UCln (n=1,...,6)”. J. Chem.Phys. 121 (22): 8. doi:10.1063/1.1811607. 
  5. ^ Lipkin, D.; Wessman, S. (1955). “Process and Apparatus for protecting Uranium hexachloride from Deterioration and Contamination”. google patent: 2. 
  6. ^ Katz,J.J; Rabinowitch,E. (1951). The Chemistry of Uranium. Ann Arbor: The McGraw-Hill Book Company. 
  7. ^ Katz,J.J; Rabinowitch,E. (1951). The Chemistry of Uranium. Ann Arbor: The McGraw-Hill Book Company. 
  8. ^ Katz,J.J; Rabinowitch,E. (1951). The Chemistry of Uranium. Ann Arbor: The McGraw-Hill Book Company. 
  9. ^ Van Dyke, R. E.; Evers, E. C. (1955). “Preparation of Uranium Hexachloride”. google patent: 2. 
  10. ^ Thornton, G.; Edelstein, N.; Rösch, N.; Woodwark, D.R.; Edgell, R.G. (1979). “The Electronic Structure of UCl6: Photoelectron Spectra and Scattered Wave Xα Calculations”. J. Chem.Phys. 70 (11): 6. doi:10.1063/1.437313. 


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