国内業界への政治的な配慮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「国内業界への政治的な配慮」の解説
上述の米国独自の特徴は、米国内の特定業界への配慮や産業振興が背景にある。 レコード業界 米国がローマ条約には加盟せず、レコード保護条約にのみ加盟したのは、著作隣接権の保護対象の違いである。著作隣接権とは著作者本人ではなく、著作物の流通に寄与する者 (著作隣接権者) の権利であるが、ローマ条約では保護対象に実演家、レコード製作者、放送事業者を含めている。しかし、レコード保護条約では実演家と放送事業者は除外されている。この理由は、1960年代頃からのレコード業界からの政治的圧力により、レコード製作者の権利は守る必要が出てきたが、著作隣接権者すべての権利を守るとなると、ハリウッド映画業界が俳優 (実演家) に追加で利用料を払わなければならなくなるためである。そこでレコード業界とハリウッド映画業界の双方に配慮するため、米国においては著作隣接権は引き続き認めないが、レコード製作者のみは著作隣接権者ではなく著作者とみなし、著作者本人の権利 (狭義の著作権) で保護することにしたのである。 IT業界 レコード業界と並んで米国の主力産業であるコンピュータ・プログラムも、政治的配慮が見られる。一般的に、産業に関する「アイディア」は産業財産権 (特許権や商標権などの総称) で守り、アイディアの「表現」は著作権で守るというアイディア・表現二分論がとられている。これにより、実用的な産業であるコンピュータ・プログラムも、ソースコードやオブジェクトコードなど一部は米国著作権法の下で保護されている。これは今日では世界的に共通の慣行であるが、もともとは米国から他国への強力な働きかけによるものであったとされ、特許を取得していないコンピュータ・プログラムであっても、著作権で保護されるようになった。
※この「国内業界への政治的な配慮」の解説は、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の解説の一部です。
「国内業界への政治的な配慮」を含む「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事については、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の概要を参照ください。
- 国内業界への政治的な配慮のページへのリンク