副腎皮質腫瘍
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/16 15:31 UTC 版)
他の大部分のがんとは対照的に、副腎皮質腫瘍ではH19の発現は低下しているようである。このダウンレギュレーションの原因を明らかにするため、正常な副腎と過形成、腺腫(英語版)、癌腫(英語版)の副腎でH19プロモーターの12個所のCpG部位のメチル化の調査が行われ、癌腫の副腎では正常な副腎や過形成、腺腫の副腎よりも多くのメチル化がなされていることが明らかにされた。正常な副腎と過形成副腎ではH19の発現は正常であるが、癌腫そして腺腫の副腎でもより低いH19の発現とIGF2の発現の上昇がみられた。 H19のRNAがダウンレギュレーションされているときにIGF2のRNAが存在することは、IGF2の発現がH19の発現の不在と密接に共役し、依存していることのさらなる証拠となっている。同様に、副腎がんにおけるH19の喪失はH19の腫瘍抑制活性を示している可能性があり、H19の喪失とその後のIGF2の増加が副腎がんの誘導に関与している可能性が示唆されている。H19の発現を抑制する上で他の部位よりも重要なCpGメチル化部位というものは存在しなかったものの、副腎がんでのCpGメチル化の増加は、正常な副腎、過形成、腺腫の副腎でのメチル化のパターンに従っていることが発見された。正常な副腎、過形成、腺腫、癌腫の副腎において、H19のCpGの平均メチル化率はsite 9、10と呼ばれる部位で最も高く、site 7と呼ばれる部位で最も低かった。転写開始点部位よりも下流に位置するのsite 13、14ではCpGの平均メチル化率に正常な副腎、過形成、腺腫、癌腫の副腎の間で有意な差はみられなかった。他に興味深い点は、正常な副腎と過形成の副腎の間で、site 11のCpGメチル化に有意な差がみられることである。過形成と腺腫の副腎におけるsite 11のCpGの平均メチル化率は正常な副腎や癌腫の副腎とは大きく異なっており、site 11が最初にメチル化されるCpGであり、それが最終的にH19プロモーターの広範なメチル化につながると示唆されている。
※この「副腎皮質腫瘍」の解説は、「H19」の解説の一部です。
「副腎皮質腫瘍」を含む「H19」の記事については、「H19」の概要を参照ください。
- 副腎皮質腫瘍のページへのリンク