初凪や魁夷の青を溜めてをり
作 者 |
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季 語 |
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出 典 |
魁夷の青 |
前 書 |
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評 言 |
古川京子(1933年~)は、山形県鶴岡市在住で、「寒雷」「陸」「爐」の同人である。 掲句は、「寒雷」で巻頭に選ばれた句である。句集名もこれに依る。初凪は、元日の海などが穏やかに凪ぐことであるが、作者のすぐ側に日本海がある。冬の日本海は荒れていることが多い。初凪はよほど珍しいに違いない。言語障害を持つ子どもたちの教師として、また家族の介護をする主婦として、初凪の海は祈りに満ちていよう。魁夷の青は、深い慈悲の青でもある。 そのほか、長く教師を勤めた中から生まれた句には、実直な人柄がよく表れている。 教師の嘘土筆野に来て裁かるる 雪雫ことばつまりし子に優し 山形県鶴岡市からは、最上川、羽黒山に近く、月山も手に取るように美しく見える。 弥陀ヶ原大河めきたる残雪抱く 月山迄庄内平野田植冷え 雪代の溢れて若し最上川 また、地吹雪のきびしい土地柄でもある。 あの世に迷ひこの世に出でて地の吹雪 師事した加藤楸邨と田川飛旅子について、次の句がある。 めざめては楸邨を読み冬ごもり 登山帽を棺の中に飛旅子逝く (写真:荒川健一) |
評 者 |
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備 考 |
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