共軛、ノルムおよび逆数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/15 05:35 UTC 版)
四元数の共軛(きょうやく)は複素共役およびクリフォード代数の元の転置 (transposition) あるいは逆転 (reversal) の類似物である。四元数 q = a + bi + cj + dk に対して、q の共軛は a − bi − cj − dk で定義される。これを q∗, q, qt, ~q などで表す。共軛をとる操作は対合、つまり自身を自身の逆とする変換であり、一つの元の共軛を二度とればもとの元に戻る。2つの四元数の積の共軛は、それぞれの四元数の共軛を「順番を逆にして」掛けたものになる。つまり p, q を四元数とすれば (pq)∗ = q∗p∗ であって p∗q∗ でない。 複素数における共軛とは異なり、四元数の共軛は乗法と加法を用いて完全に書き表すことができる: q ∗ = − 1 2 ( q + i q i + j q j + k q k ) {\displaystyle q^{*}=-{\frac {1}{2}}(q+iqi+jqj+kqk)} 共軛を用いると、四元数 p の実部、虚部はそれぞれ p + p*/2, p − p*/2 となる。 四元数 q のノルム ‖ q ‖ は、自身とその共軛の積の平方根として定義される: ‖ q ‖ = q q ∗ = q ∗ q = a 2 + b 2 + c 2 + d 2 {\displaystyle \lVert q\rVert ={\sqrt {qq^{*}}}={\sqrt {q^{*}q}}={\sqrt {a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}}}} (ハミルトンはこれを四元数のテンソルと呼んだが、この用語は現代的な意味でのテンソルと衝突する) これは、H を数ベクトル空間 R4 と見なした時のユークリッドノルムに等しく、ノルムの公理を満たす。すなわち、常に非負の実数で、任意の2つの四元数 p, q に対して ‖ p q ‖ = ‖ p ‖ ‖ q ‖ {\displaystyle \lVert pq\rVert =\lVert p\rVert \lVert q\rVert } が成り立つ。特に、実数 α に対して ‖ α q ‖ = | α | ‖ q ‖ {\displaystyle \lVert \alpha q\rVert =|\alpha |\lVert q\rVert } が成り立つ。 この乗法性は、積の共軛に関する式からの帰結である。あるいは、正方行列の行列式の乗法性と公式 a 2 + b 2 + c 2 + d 2 = det ( a + i b i d + c i d − c a − i b ) {\displaystyle a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2}=\det {\begin{pmatrix}a+ib&id+c\\id-c&a-ib\end{pmatrix}}} (i は通常の虚数単位)から乗法性を示すこともできる。 このノルムを使って、四元数 p と q の間の距離 d(p, q) を、それらの差のノルム (d(p, q) = ‖ p − q ‖) として定義することができる。これにより H は距離空間となり、加法と乗法はこの距離位相に関して連続になる。
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