全世界への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/29 07:48 UTC 版)
大量の溶岩と火山灰を噴出した大噴火によって、成層圏に大量のエアロゾルと塵埃が放出された。成層圏で酸化した二酸化硫黄が作り出す硫酸エアロゾルは、噴火から一年をかけて成層圏をゆっくりと拡散していった。成層圏へのエアロゾル注入は、1883年のクラカタウの噴火以来の規模で、二酸化硫黄の量は約1700万トンと見積もられている。現代の観測機器で測定された中では最大の量である(チャートと図を参照のこと)。 成層圏へのエアロゾルの大量放出の結果、地表に達する太陽光が最大で5%減少した。北半球の平均気温が0.5から0.6℃下がり、地球全体で約0.4℃下がった。同時に、エアロゾルが輻射を吸収して成層圏の温度が通常より数℃上昇した。噴火で作られた成層圏の雲は、3年間も大気中に残存した。 噴火はオゾンレベルに重大な影響を与え、オゾン層の破壊率が大幅に上がった。中緯度のオゾンレベルは最低を記録し、1992年の南半球の冬季には、南極上空のオゾンホールが過去最大の大きさになり、オゾン層破壊の最高速度を記録した。1991年のチリのハドソン山の噴火も南半球のオゾン層破壊に影響した。ピナトゥボ山とハドソン山それぞれのエアロゾル雲が圏界面に到達した際、オゾンレベルの急低下が観測された。 成層圏の塵埃によって、顕著な影響がもうひとつ見られた。月食の見掛けへの影響である。通常は半分の食であっても暗いとはいえ目に見えるが、噴火後は火山灰が太陽光を吸収するため、食の間は通常の月食に比べて暗く、見えにくかった。
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