仮面の詳細
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 04:54 UTC 版)
演劇用の仮面が描かれた絵を見ると、顔面全体と頭を覆うヘルメット状の形であり、かつらと一体化していて目と口の部分に穴がある。興味深いことに、演劇の最中に役者が仮面を着けた状態を描いた絵はなく、劇の前か後で役者が仮面を手に持っている絵しかない。それらは、観客と舞台の境界、神話と現実の境界を描いたものである。仮面が顔に溶け込むことで、役者はその役になりきると考えられていた。実際、仮面はせりふを覚えるのと同程度に役者を変えた。古代ギリシア劇では、仮面をつけた役者とその劇の登場人物とを同一視していた。 仮面製作者は skeuopoios(小道具製作者)と呼ばれており、仮面だけを作っていたわけではないと思われる。仮面は軽い方がよいため、人毛または動物の毛をかつらに使い、亜麻布、革、木、コルクなどを使って作っていた。仮面を着けると視界が限定されるため、役者は耳が聞こえないと演じられない。そのため、耳を隠すとしても仮面で耳を覆うことはなく、自分の髪の毛で隠していたと考えられている。仮面の口の部分の開口部は小さく、役者自身の口が見えるのを防いでいた。1960年代には仮面がメガホンの役割も持っていたという説があったが、Vervain と Wiles は開口部が小さいため、その説は成り立たないとしている。ギリシャ人の仮面製作者 Thanos Vovolis は、仮面が共鳴装置のように働いて声の音響特性を強化するのではないかと示唆している。これによってエネルギーと存在感が増し、役者がその役になりきることをより完全にすると考えられる。
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