今西の生物社会論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/16 05:06 UTC 版)
今西錦司は棲み分け理論の発展を元に、独自の生物社会論を論じている。彼はすべての生物が種社会を持つと考えた。彼はこれをスペシアと名付け、それを構成する要素をスペシオンと呼んだ。具体的にはこれは個体である。しかし、スペシオンが複数個体の集まりと見なすべき場合もあり、ハチなどでは群れがこれに当たる。そのような複数個体がスペシオンと見なされる場合、これをゼニアと呼び、その構成個体をゼニオンと名付けた。この辺りの用語には、時期によっても多少の出入りがある。 彼は生物は種によってそれぞれの個体がさまざまな外界とのやり取りを持つが、それは同種であれば個体が異なっても性質はほぼ同じであるから、環境とのやり取りのあり方が同じになり、これを通じて他個体との間に一定の関係を生じるとする。そこで同種個体間には種社会を支えるような関係を生じるものと考えた。 他方で、種が異なっている場合、類縁関係が近いものでは、その性質には共通性が多いので、環境とのやり取りのあり方には種内ほどではなくとも共通性が多いであろう。そうすれば当然それらの間には一定の関係が成立する。そして類縁関係が遠ければ遠いほど、そのような個体間の関係性は保ちにくくなる。例えば同じ場所に生活していても、哺乳類間のやり取りは、昆虫間のやり取りとは全く異なる。その結果、哺乳類と昆虫とでは、個体間の関係が定まりにくく、同じ場所にそれらが混じって生活している場合にも、昆虫同士、ほ乳類同士の方がより濃厚な関係を結びやすいとする。比較的類縁の近いもの同士では、種内より希薄ではあってもそこに一定の社会的関係が生じると考え、これを同位社会と呼んだ。つまり、一つの環境には、さまざまな分類群ごとの多様な同位社会が重なり合っている。 特に、系統的にごく近縁な種同士では、互いの要求がとても近くなるので、ここに緊張関係が生まれる。そこで、互いに場所を分け合うことで、これを回避する現象が生じる。これが彼の考える住み分けである。
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