主系列から漸近巨星分枝へ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:43 UTC 版)
「漸近巨星分枝」の記事における「主系列から漸近巨星分枝へ」の解説
小中質量の恒星が中心部の水素を燃焼し尽くすと、水素核融合によって生じたヘリウムでできた核が形成される。この中心核では核融合反応が起こらず、自らの重力で潰れていくのを電子の縮退圧で支えられた状態となっている。この収縮する過程で発生する熱により、中心核を取り囲む水素の殻のような層で核融合が行われる。水素殻での核融合によりヘリウムが供給されることで中心核の質量は増え、さらに縮退が進んで温度は上昇する。逆に、核の周りの外層は膨張して表面温度は下がるため、光度が大きく低温の赤色巨星となる。このような天体は、HR図上では右上の赤色巨星分枝 (RGB, Red Giant Branch) と呼ばれる部分に分布する。この段階で、核で生成された物質の一部が外層に混じる「汲み上げ効果」が生じ、恒星大気のスペクトルに核融合で生成された物質が観測されるようになる。RGB以降の恒星進化においては、この汲み上げ効果が起こる過程が複数あることから、恒星大気の組成の研究は恒星進化論の研究に欠かせないものとなっている。 縮退がさらに進み、核の温度が約1億Kに達すると、中心核でヘリウム核融合が暴走するヘリウムフラッシュと呼ばれる現象が生じる。これにより核は膨張した後、安定したヘリウム核融合を続け、その外側の球殻では水素の核融合が継続される。これにより恒星は膨張から収縮に転じ、表面温度は上昇を始め、HR図上では左または左下の方向へ移動する。この段階は、種族IIの星では水平分枝、種族Iの星ではレッドクランプに相当する。 中心核でのヘリウム核融合が終わると、恒星は再びHR図上を右上に移動する。このとき、かつてRGBに至ったときと同じような経路をたどるため、この段階のことを「漸近巨星分枝 (AGB, Asymptotic Giant Branch) 」と呼び。この段階にある星は「AGB星(AGB star、asymptotic giant branch star)(漸近巨星分枝星)」と呼ばれる。
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