中上健次の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 08:57 UTC 版)
作家・中上健次は大江を年長のライヴァルとみており、そのことから殊更大江には厳しく出て、戦後民主主義的価値観やブッキッシュな小説作法を批判するのが常であったが、本作を絶賛している。 「大江健三郎は実に不思議な作家である。この書き方、この硬直した思考では次は駄目だろうと思っていると、デッドロックを予測もしない方向から易々と抜け、新しい展開を見せている。先の短篇 ( 「夢の師匠 」 群像十月号 )もそうであったが、文章から吃音癖が取れ、しなやかになっている。その文章が私小説的素材を語っていくのであるが、語り手、妻 、光、まり恵さん等、登場人物の親和力ともあい重なり、豊かで深々としたコ ーラスを聴いているような気にさせる。この小説では、なにげない挿話として入っている病院で光が暴れ、帰り道てんかんの発作で電車とホ ームの間に足をおち込ませるくだり、三年前 、五年前の大江健三郎なら、吃音の強い切迫した息づかいの文章で描いたはずである。しかし現在は違う。それ故に神々しさのようなものがあらわれる。感傷でもない涙がわく。」
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