不思議な箱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/05/05 03:12 UTC 版)
ある日、村の庄屋様が外出から戻って来ると、床の間に置いてあった壺が壊れていた。壺を壊したのは、庄屋様の屋敷で働いている使用人の誰かに違いないと思われたが、使用人たちは口をそろえて「壺を壊したのは自分ではない」と否認するばかりで、どうしても犯人が分からない。困った庄屋様が彦一の家へ相談に行くと、彦一は「よろしい。すぐに犯人を見付けてみせよう」と言う。しばらくして、彦一が神社の神主を連れて庄屋様の屋敷にやって来た。庄屋様と使用人たち一同の前で、彦一は古ぼけた箱を見せ、「この箱は昔から神社に伝わる不思議な箱だ。自分の名前を紙に書いてこの箱に入れ、神主が祝詞を唱えると、紙に書かれた名前が全部消えてしまうが、悪い事をした者の名前だけは消えずに残る」と言うので、使用人たちはそれぞれ紙に自分の名前を書いて箱に入れ、蓋をした。そして神主が祝詞を唱えた後に箱を開けてみると、名前が消えている紙はたった一枚だけである。「これはどういうことだ? 一人を除いて全員が犯人ということか?」と庄屋様が尋ねると、彦一は首を振って、「この箱は不思議な箱でも何でもない。ただ、悪い事をした者の名前は消えずに残ると聞いて、不安を感じた犯人だけが最初から名前を書かなかったのだ」と説明した。そこで紙に書かれている名前をよく調べると、平助という使用人の名前だけが書かれていないことが判明し、平助も観念して壺を壊した事実を認めたのだった。
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