一部だけを標本とする場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 23:49 UTC 版)
「標本 (分類学)」の記事における「一部だけを標本とする場合」の解説
もっとも特徴が現れる部分のみを標本とする例や、保存しやすい部位だけを標本とする例もある。たとえば貝類は、貝殻のみを標本とする伝統があった。貝類には熱狂的なコレクター層があり、貝殻だけを収集することが普通であったというのもその原因のひとつであろう。いずれにせよ、この場合、それがその生物の一部であるとは認識されていなかった気配がある。とにかく基本的には貝殻の特徴だけに基づく分類体系が組み立てられていた。しかし、他の分野の生物学において生殖器の構造などに着目した分類が進むにつれ、それらにも目が向けられるようになり、さらに近年の分子系統学の進歩により、その方向からも光が当てられるようになったため、その分類体系に大きな見直しが必要となっている。 やむを得ず一部のみを標本とする場合もある。どうしても一部しか入手できなかった場合もある。ヤンバルテナガコガネは長い間、翅一枚のみで知られてきた。化石の場合、むしろこれが常態である。 逆の意味で特殊なのは菌類である。菌類では栄養体はほとんど特徴を示さず、生殖器官のみが注目される傾向がある。例えばキノコの標本は、キノコの部分のみを取り上げて作成される場合が多い。しかし、キノコの栄養体はキノコの基部から下に広がっている菌糸体である。したがって、この採集のやり方は、高等植物で言えば葉や茎を無視して花だけを採集しているのに近い。しかし、菌糸体を採集するのはまず不可能であるし、したとしても大した情報が得られないのも事実である。
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