ヴィーナスか、アンティオペーか
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 15:48 UTC 版)
「眠れるヴィーナスとキューピッド、サテュロス」の記事における「ヴィーナスか、アンティオペーか」の解説
本作品はかつてはギリシア神話に登場する女性アンティオペを描いた作品と考えられていた。1709年と1710年に初めてアンティオペとして記録され、19世紀においても『ユピテルとアンティオペ』として知られていた。 アンティオペはテーバイ王ニュクテウスの娘であり、サテュロスに変身したゼウスとの間に双子の英雄ゼトスとアムピオンを生んだとされる。この物語はオウィディウスの『変身物語』でも取り上げられているが、ゼウスが訪れたときにアンティオペが眠っていたとは語られていない。実際、絵画に描かれたアンティオペは必ずしも眠っているわけではない。ゼウスがサテュロスに変身していることを示すためにアトリビュートのワシが描かれている場合は眠っている女性をアンティオペと判別することは容易だが、そうでない場合はアンティオペともヴィーナスともとれる曖昧な作品が多い。 本作品の場合はゼウスを示するものが描かれておらず、また1627年のゴンザーガ家の財産目録で『眠れるヴィーナス、クピドとサテュロス』と記載されていること、イングランド国王チャールズ1世の時代に制作されたピーター・オリバーのミニアチュールの複製が『天上の愛』(Celestial Love)および『地上の愛』(Earthly Love)と呼ばれていたことから ヴィーナスを描いたものと考えられている。1997年に新たに発見されたゴンザーガ家の記録よりもさらに古い1589年のマフェイ家の財産目録においても、「コレッジョの手になる、眠れるウェヌスとクピド、覆いを取るサテュロス」と記されていることがそれを裏付けている。ただし図像的にはカラッリョの『ユピテルとアンティオペ』との類似が見られるなど、アンティオペとは極めて近い関係にある。
※この「ヴィーナスか、アンティオペーか」の解説は、「眠れるヴィーナスとキューピッド、サテュロス」の解説の一部です。
「ヴィーナスか、アンティオペーか」を含む「眠れるヴィーナスとキューピッド、サテュロス」の記事については、「眠れるヴィーナスとキューピッド、サテュロス」の概要を参照ください。
- ヴィーナスか、アンティオペーかのページへのリンク