レーダー電波の減衰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 09:12 UTC 版)
電波は、大気中の酸素や水蒸気などの気体により吸収されたり、霧、雲、雨、雪などにより散乱して減衰したりする。波長の短い電波ほど大気中の気体に吸収され易く、電波を送信・反射・受信する間に、電波のエネルギーはその経路にある気体により吸収され減衰する。 10GHz以下の周波数では酸素や水蒸気等の気体による吸収はほとんど無視できる。雲や霧においては、視程が100m以上程度の濃度の場合、探知距離はほとんど影響を受けないが、視程が50m程度の濃霧の場合、影響を受ける。特にレーダーから測定対象までの距離が遠方にある場合(電波の往復距離が長いので影響を受けやすい。)、減衰が大きい。雨や雪の場合、雨滴が大きくなると散乱が急増し減衰が起きる。電波の波長が長くなると散乱による影響は少なくなる。雪の影響もほぼ同様の傾向を示す。 このようにレーダーでは、波長の長い(=周波数が低い。)電波を使うと電波の散乱による減衰が少なく、遠くまで探知することができるが、一方で分解能が低くなるため、目標の解像度は悪くなる。逆に、波長の短い(=周波数が高い。)電波は、空気中に含まれる水蒸気や雲・雨などに吸収・反射され易いので減衰が大きく遠くまで探知するのに困難を伴う一方で高い解像度を得ることができる。したがって、遠距離の目標をいち早く発見する必要性のある捜索用の対空レーダーや水上レーダーでは周波数が低い電波を用いる傾向があり、一方で射撃管制レーダーなど、目標の形・大きさなどを精密に測定する必要性のあるものでは周波数が高い電波を用いる傾向がある。
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