リチウムテスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 19:13 UTC 版)
褐色矮星の可能性がある天体を低質量の恒星と区別するためにリチウムを用いる手法は「リチウムテスト」と呼ばれる。これは、天体のスペクトル中にリチウムの吸収線が見られるか否かでその天体が褐色矮星であるか否かを判別する手法である。リチウムは、ビッグバンの際に水素やヘリウムとともに合成されて宇宙に広く存在するため初期の星にも含まれる元素であるが、軽水素核融合が起きる温度(3×106K)よりも低い温度(2.5×106K)で核融合反応が起こってヘリウムに変わるため、軽水素核融合が起こるような通常の恒星では星内部の対流によって星全体のリチウムが短期間で消費し尽くされており、リチウムのスペクトルは見られない。従ってこのスペクトルが見られる場合、その天体は褐色矮星である可能性が高い。この手法は、Rafael Rebolo、Eduardo Martín、Antonio Magazzu によって考案された。しかし、非常に若い恒星ではリチウムが燃焼し切るための十分な時間が経過していないため、リチウムが見られる。 太陽のようにより重い恒星でも、外層にリチウムを含んでいる場合がある。これは外層はリチウム燃焼を起こすほど高温にならず、また対流層がリチウムが急速に消費される核と混合しないことによる。ただしこれらの大きな恒星の場合は、そのサイズと光度の違いから、褐色矮星と区別するのは容易である。 対照的に、褐色矮星の中でも大きな質量を持つものは、年齢が若いうちにリチウムを消費するのに十分な高温になることができる。質量が木星の65倍よりも重い褐色矮星では、年齢が5億歳の段階までにリチウムを燃焼させることができる。そのため、リチウムテストによる判定は完璧ではない。
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