マフラーを首のかたちのままに貸す
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冬 |
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評 言 |
俳句で新しさを求めるとき、まだあまり使われていない素材にやみくもに手を出すよりも、既に使い尽くされたと思われがちな素材に対し、今までに無い調理法を試みるところに作家としての醍醐味があるのではないだろうか。 掲句の作者である宮嶋梓帆は疑うことなく季語と向き合いながら、手を伸ばせば届くところにある素材を明るく開放するように俳句を紡いでいく。1986年、愛媛県生まれ。作品は第2回芝不器男俳句新人賞の応募作品の中から引いた。他にも「起きてまず震える体花菫」「抱きしめて浮輪の息を抜きにけり」「男みなカレー勤労感謝の日」など、才気溢れる句が並ぶ。何となくケミカルな匂いを感じてしまうことの多い俳句甲子園出身者たちの作品のなかで、彼女の作品はオーガニックな魅力を醸し出している。「首のかたち」という大胆で抒情的な措辞。省略された登場人物の微妙な距離感。マフラーを貸す者の思いやりと相手への眼差し。借りる者の心の動きと息遣い。そのすべてを温かく優しく包み込むマフラー。冬の寒さを逆手にとって、読者の体温をほんの少し上げてくれる清新な一句である。 |
評 者 |
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備 考 |
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