ヘテロクロマチンの役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 10:03 UTC 版)
「紡錘体チェックポイント」の記事における「ヘテロクロマチンの役割」の解説
古典的な細胞学的観察から姉妹染色分体はヘテロクロマチン領域でより強固に接着していることが示唆されており、ヘテロクロマチンの特別な構造または組成がコヒーシンのリクルートに有利に働いている可能性が示唆されている。事実、分裂酵母ではSwi6(HP1の分裂酵母ホモログ)はヒストンH3のメチル化されたリジン9番残基に結合し、コヒーシンのセントロメアリピートへの結合を促進する。より近年の研究からは、分裂酵母と脊椎動物の双方において、RNAi装置がヘテロクロマチンの確立を調節しており、この領域へのコヒーシンのリクルートを調節していることが示唆されている。一方で、出芽酵母ではセントロメアに近接したヘテロクロマチン領域が存在しないにもかかわらず、機能的なセントロメアの存在によってそれに隣接する20–50 kbの領域でコヒーシンの結合の増加が誘導されることから、ヘテロクロマチン以外にもセントロメアでの接着の強化を保証する機構が存在するはずである。 これに関連して、ヒト細胞では有糸分裂中にOrc2(英語版)(S期のDNA複製の開始に関与する複製起点認識複合体(ORC)に含まれるタンパク質の1つ)もキネトコアに局在している。一部の観察では酵母のOrc2は姉妹染色分体間の接着に関与することが示唆されており、その除去によってSACの活性化が誘導される。また、ORC複合体の他の構成要素(分裂酵母のOrc5など)も接着に関与することが観察されている。ORCタンパク質が関与する経路はコヒーシン経路に対して相加的に作用するようであるが、その大部分は未解明である。
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