姫麒麟草
ヒメキリンソウ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/21 12:10 UTC 版)
ヒメキリンソウ | ||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Phedimus sikokianus (Maxim. ex Makino) 't Hart (1955)[1] | ||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ヒメキリンソウ(姫麒麟草)[4] |
ヒメキリンソウ(姫麒麟草、学名: Phedimus sikokianus)は、ベンケイソウ科キリンソウ属の多年草[4][5]。
特徴
根茎は短く、花茎の高さは8cmになり、直立する。葉は対生し、その数は3-4対と少ない。葉身は長さ1-1.5cm、幅0.8-1cmの広倒披針形から倒卵形で、先端は鈍頭、基部はしだいに細まり、葉縁の上部半分に波状の鋸歯がある[4][5]。
花期は7月。茎の先端に小型の集散花序をつけ、10個以下の花をつける。花は黄色で5数性、萼裂片は線形。花弁は線状披針形で、先端が針状に鋭くとがり、長さ8mmになる。雄蕊は10個あり、裂開直前の葯は赤橙色。心皮は5個あり、果時に広く開出する[4][5]。染色体数2n=16の2倍体[6]。
本種はキリンソウ Phedimus aizoon var. floribundus と同種とされてきた経過があるが、花茎が8cmと短いこと、葉がつねに対生すること、花序が小型で花数が10個以下であることなどで明らかに区別される[4][5]。なお、キリンソウ属のなかで唯一の2倍体種である[6][7]。
分布と生育環境
日本固有種[6]。四国山地に分布し、標高1300-1600mの[7]岩礫地に生育する[5]。
名前の由来
和名ヒメキリンソウは、「姫麒麟草」の意で、小型のキリンソウの意味[4]、「ひめきりんさう」は、牧野富太郎 (1889)による[8]。牧野は、知人の渡邊莊兵衛が高知県高岡郡の鳥形山の山頂で採集したものに Sedum sp. と仮称し、この和名をつけた[9][8]。
種小名(種形容語)sikokianus は、「四国産の」の意味[10]。牧野富太郎が1885年に高知県手箱山で採集した本種をロシアの植物学者のカール・ヨハン・マキシモヴィッチに送付し、後にマキシモヴィッチから、新種 Sedum sikokianum Maxim. との回答を得た。牧野は、1891年に『日本植物志図篇』第1巻第10集にこの学名を添えて出版した[2][11]。
種の保全状況評価
絶滅危惧IB類 (EN)(環境省レッドリスト)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、徳島県が絶滅危惧IA類(CR)に、高知県が注目種になっている[12]。
ギャラリー
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茎の先端に小型の集散花序をつけ、この個体は2-3個の花をつける。花は黄色で5数性、花弁は線状披針形で、先端が針状に鋭くとがる。雄蕊は10個あり、裂開直前の葯は赤橙色になる。
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花茎は直立する。葉は対生し、その数は3-4対と少ない。葉身は広倒披針形から倒卵形で、先端は鈍頭、基部はしだいに細まり、葉縁の上部半分に波状の鋸歯がある。萼裂片は線形になる。
脚注
- ^ ヒメキリンソウ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b ヒメキリンソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ヒメキリンソウ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.528
- ^ a b c d e 大場秀章 (2016)「ベンケイソウ科」『改訂新版 日本の野生植物 2』p.222
- ^ a b c 秋山忍 (2011)「ベンケイソウ科キリンソウ属」『日本の固有植物』p.68
- ^ a b 大場秀章「ヒメキリンソウの分布」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第80巻第5号、津村研究所、2005年、313-314頁、doi:10.51033/jjapbot.80_5_9851。
- ^ a b 牧野富太郎「日本植物報知第二(前號ノ續)」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第3巻第23号、東京植物学会、1889年、1-2頁、doi:10.15281/jplantres1887.3.1。
- ^ 牧野富太郎「日本植物報知第二 渡邊莊兵衛氏ノ採集品ニ就テ」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第2巻第22号、東京植物学会、1888年、251-255頁、doi:10.15281/jplantres1887.2.251。
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1513
- ^ ヒメキリンソウ、高知県立牧野植物園
- ^ ヒメキリンソウ、日本のレッドデータ検索システム、2025年7月21日閲覧
参考文献
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- ヒメキリンソウ、高知県立牧野植物園
- 牧野富太郎「日本植物報知第二 渡邊莊兵衛氏ノ採集品ニ就テ」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第2巻第22号、東京植物学会、1888年、251-255頁、doi:10.15281/jplantres1887.2.251。
- 牧野富太郎「日本植物報知第二(前號ノ續)」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第3巻第23号、東京植物学会、1889年、1-2頁、doi:10.15281/jplantres1887.3.1。
- 大場秀章「ヒメキリンソウの分布」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第80巻第5号、津村研究所、2005年、313-314頁、doi:10.51033/jjapbot.80_5_9851。
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