バリオン非対称性パラメータ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:13 UTC 版)
「バリオン数生成」の記事における「バリオン非対称性パラメータ」の解説
物理の理論に対する課題は、どのようにして反物質よりも物質が多くなったのか、そしてこの非対称性の大きさを説明することである。重要な数量詞は非対称性パラメータであり、次の簡単な式で表される。 η = n B − n B ¯ n γ {\displaystyle \eta ={\frac {n_{B}-n_{\bar {B}}}{n_{\gamma }}}} . この量はバリオンと反バリオン(それぞれnBとnB)の全体的な数密度の差と、宇宙背景放射光子の数密度nγとの関係を表している。 ビッグバン模型によると、物質はおよそ3000ケルビンの温度(平均運動エネルギーは3000 K / (10.08×103 K/eV) = 0.3 eVに相当)で宇宙背景放射(CBR)から分離される。分離後、CBR光子の総数は一定である。したがって、時空間の膨張により光子密度は減少する。立方センチメートルあたりの平衡温度Tでの光子密度は次式で与えられる。 n γ = 1 π 2 ( k B T ℏ c ) 3 ∫ 0 ∞ x 2 e x − 1 d x = 2 ζ ( 3 ) π 2 ( k B T ℏ c ) 3 ≈ 20.3 ( T 1 K ) 3 cm − 3 {\displaystyle n_{\gamma }={\frac {1}{\pi ^{2}}}{\left({\frac {k_{B}T}{\hbar c}}\right)}^{3}\int _{0}^{\infty }{\frac {x^{2}}{e^{x}-1}}\operatorname {d} x={\frac {2\zeta (3)}{\pi ^{2}}}{\left({\frac {k_{B}T}{\hbar c}}\right)}^{3}\approx 20.3\left({\frac {T}{1{\text{K}}}}\right)^{3}{\text{cm}}^{-3}} kBはボルツマン定数、ħはプランク定数を2πで割った数、cは真空における光速、ζ(3)はアペリーの定数である。現在のCBR光子温度2.725 Kでは、これは1立方センチメートルあたりおよそ411個のCBR光子密度nγに相当する。 それゆえ、上記で定義された非対称性パラメータηは「最良」のパラメータではない。代わりに好まれる非対称性パラメータはエントロピー密度sを使用する。 η s = n B − n B ¯ s {\displaystyle \eta _{s}={\frac {n_{B}-n_{\bar {B}}}{s}}} なぜなら宇宙のエントロピー密度は、その進展の大部分を通じて合理的に一定であった。エントロピー密度は s = d e f e n t r o p y v o l u m e = p + ρ T = 2 π 2 45 g ⁎ ( T ) T 3 {\displaystyle s\ {\stackrel {\mathrm {def} }{=}}\ {\frac {\mathrm {entropy} }{\mathrm {volume} }}={\frac {p+\rho }{T}}={\frac {2\pi ^{2}}{45}}g_{\text{⁎}}(T)T^{3}} である。ここでpとρはエネルギー密度テンソルTμνの圧力と密度、g⁎は温度Tでの「質量の無い」粒子の自由度の有効数で、mc2 ≪ kBTが成立するとき g ⁎ ( T ) = ∑ i = b o s o n s g i ( T i T ) 3 + 7 8 ∑ j = f e r m i o n s g j ( T j T ) 3 {\displaystyle g_{\text{⁎}}(T)=\sum _{\mathrm {i=bosons} }g_{i}{\left({\frac {T_{i}}{T}}\right)}^{3}+{\frac {7}{8}}\sum _{\mathrm {j=fermions} }g_{j}{\left({\frac {T_{j}}{T}}\right)}^{3}} , である(温度がそれぞれTiとTjで自由度がgiとgjであるボソンとフェルミオンの場合)。現在はs = 7.04 nγ.である。
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