ダイシーと法の支配
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:46 UTC 版)
法の支配を理論化したのは、ダイシーの『憲法序説』であり、以後国会主権(Parliamentary Sovereignty)と法の支配がイギリス憲法の二大原理とされるようになった。 ダイシーによれば、法の支配は以下の三つの内容をもつものとされる。 専断的権力の支配を排した、基本法の支配(人の支配の否定) すべての人が法律と通常の裁判所に服すること(法の前の平等、特別裁判所の禁止) 具体的な紛争についての裁判所の判決の結果の集積が基本法の一般原則となること。(具体的権利性) ただし、ダイシー流の法の支配に対しては、ダイシー自身の政治思想や当時のイギリスの政治状況、例えば、コレクティビズム(集産主義)という概念を作り出し批判するのは、自身の政治信条であるホイッグを擁護する点にあるのではないか、フランスでは行政行為に司法審査が及ばないと誤解したことに端を発する行政法に対する不寛容、法の支配の第3番目の内容は国会主権を否定するに等しいなどジェニングズ(W.I.Jennings)による体系だった批判がなされているが、ダイシー流の法の支配は現在でもイギリスの公法学界において多大な影響力を有している。 また、国会主権と法の支配との関係については、ハートVSロン・フラー論争を代表に議論がなされているが、ダイシー流の法の支配は、国会を上訴権のない裁判所ととらえることなどにより国会主権が多数者支配を是認するものとはとらえず、コモン・ローの伝統的理解にむしろ忠実なものであるとの理解がイギリスの公法学界では通説とされている。
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