ジャイレース阻害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/03/02 12:03 UTC 版)
「グルタミン酸ラセマーゼ」の記事における「ジャイレース阻害」の解説
細胞壁生合成の機能とともに、このタンパク質はジャイレース阻害の機能も独立に持っている。ある種の細菌の持つMurIは、DNAジャイレースのDNAへの結合を阻害し、DNAジャイレースの活性を減少させる。DNAジャイレースがDNAに結合すると、DNAジャイレースはDNAの螺旋をゆるめ、超螺旋の状態にする。これは、細菌細胞の複製に先だって起こるDNA複製に必須のステップである。この過程にグルタミン酸ラセマーゼが存在すると、DNAジャイレースの活性部位を変形させ、DNAに効率的に結合できないようにする。これにより、DNAジャイレースはDNAの螺旋構造をほどくことができなくなる。 MurIのこの機能は、実験的に発見された。DNAジャイレースをMurIと一緒にインキュベートし、DNAのサンプルに加えると、MurIが存在している時に超螺旋活性が阻害された。MurIの細胞壁合成の機能は、このもう一つの機能には直接関わっておらず、独立していた。これは、逆にDNAジャイレースはMurIのラセミ化の作用には影響を及ぼしていないことを意味し、実験でも確かめられている。実験によって、ラセマーゼの基質であるL-グルタミン酸が離れたDNAジャイレース阻害の活性部位に含まれていることが明らかとなり、MurIは2つの機能に対して、2つの異なる活性部位を用いていることが発見された。DNAジャイレース阻害作用は、ラセマーゼの基質が存在しても開始し、全く変わらないことが示された。この発見により、2つの機能は、重なりのない活性部位においてそれぞれ独立に実行され、MurIを真の多機能タンパク質としていることが明らかとなった。ラセマーゼ活性を持たないMurIの変異体が、変異のないMurIと同程度にDNAジャイレース阻害活性を持つことも示された。
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