バイカウツギ
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バイカウツギ | |||||||||||||||||||||||||||
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バイカウツギ
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Philadelphus satsumi Siebold ex Lindl. et Paxton (1851)[1] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
バイカウツギ (梅花空木[4]、学名: Philadelphus satsumi) とはアジサイ科バイカウツギ属[注 1]の落葉低木。別名サツマウツギ[1]。山地や丘陵の林内に生え、庭木にもされる。
和名の由来はウメに似た花を咲かせることから、「梅花」(ばいか)の名がある[5]。ライラック(学名: Syringa vulgaris)と混同されていた時期があり、共に牧神パンの笛という意味の言葉 Syrinx に由来するシリンガという名前で呼ばれ、一つの属にくくられていた[6]。
種別
バイカウツギ Philadelphus satsumi は日本の在来種で[7]、セイヨウバイカウツギ(Philadelphus coronarius、トルコ・コーカサス原産、外来種として欧米に分布)は別種である[8]。
特徴
落葉広葉樹の低木で、高さは1 - 3メートルになる[5][4]。樹皮は灰褐色から茶褐色で、リボン状に縦に剥がれ落ちる[4]。若い樹皮は灰褐色で縦に筋が入る[4]。若枝は赤褐色をしている[4]。
花期は5 - 6月頃[5]。葉は枝に対生し、葉身の長さは5 - 10センチメートルほどあり、5本の葉脈が目立つ[5]。葉をもむとキュウリの匂いがする[9][疑問点 ]。小枝の先から総状花序を出して、直径3センチメートルほどの4弁の白い花を5 - 10個つけて咲かせる[5]。果実は9 - 10月に灰緑色に熟す[5]。冬芽は隠芽で葉痕に隠れて見えない。葉痕は三角形で白っぽい色をしており、維管束痕が3個つき、中に冬芽があるため中央が隆起する[4]。春になると、葉痕の表面が裂けて芽吹き始める[4]。
分布
日本では本州(青森県西津軽以南[10])、四国、九州に分布する[5]。丘陵や山地の林内に自生するが、庭木にもなり、園芸植物として世界中で栽培されている[5][4]。
1562年、神聖ローマ帝国の使者オージェ・ギスラン・ド・ブスベックがトルコから P. coronarius を持ち帰りヨーロッパに紹介した[9][11][12]。そののち南欧で栽培がされており[13]、英国のジョン・ジェラードの記述(『Herball』、1597年)に、庭で大量に栽培していたという記述があるなど[9][15]、ヨーロッパには早くから帰化した[9]。原産地は、そのトルコすなわち小アジアとも考えられてはいたが[9]、近年の学術書によれば、これは中近東あたりの原産である[11][注 2]。[疑問点 ]
マキシモヴィッチ (1867年)は、バイカウツギ属の房状花序のものは、どこの産出だろうと(ヨーロッパ、コーカサス、ヒマラヤ、東シベリア、中国東北部、日本、北米産も含め)、セイヨウバイカウツギ P. coronarius 種の品種とみなした[17]。原産地がどこなのかは、上述したように諸説あり、あるいは原産地不詳だと北村四郎は述べている[13]。
ただしマキシモヴィッチは、ヨーロッパのものは日本のバイカウツギが渡来したものと考え、北村もこの渡来説には同調している[18]。
用途

芳香のある美しい花が咲くことから[5]、鑑賞用に植栽され花は香水の材料として採用される。園芸植物としては匂いが特色とされ、品種の改良はあまり進展しなかった[19]。
ライラックとバイカウツギが同じ16世紀頃にヨーロッパに輸入され、ともに Syringa と長らく同じ名で呼ばれて混同が生じたが[14][11]、Syringa の原義は「葦笛」や「パイプ」であって、そもそもトルコでは、茎が中空になるこの二つの属の灌木が、パイプ製造の原料にされていたことに由来するという[11]。[疑問点 ]
花の匂いをかぐことによって酩酊したような気分になる人もいる。ジェラードはバイカウツギの匂いの為に眠れなかったことがあると述懐している[9][14]。またE・A・ボウルズによって花粉症の原因となることが指摘されている[9]。[疑問点 ]
脚注
注釈
出典
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Philadelphus satsumi Siebold ex Lindl. et Paxton バイカウツギ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月23日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Philadelphus coronarius auct. non L. バイカウツギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年9月1日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Philadelphus coronarius L. var. satsumi (Siebold ex Lindl. et Paxton) Maxim. バイカウツギ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月23日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫, 高橋冬 & 安延尚 2014, p. 91.
- ^ a b c d e f g h i 平野 1997, p. 207.
- ^ a b コーツ 1991, pp. 142–144.
- ^ “Philadelphus satsumi Siebold ex Lindl. & Paxton” (英語). Plants of the World Online. Royal Botanic Gardens, Kew. 2025年7月8日閲覧。
- ^ “Philadelphus coronarius L.” (英語). Plants of the World Online. Royal Botanic Gardens, Kew. 2025年7月8日閲覧。
- ^ a b c d e f g Coats 1965, pp. 244–245, 334–335; コーツ 1991, pp. 142–144
- ^ “東北森林管理局/管内の樹木一覧(バラ目)”. www.rinya.maff.go.jp. 2025年4月27日閲覧。
- ^ a b c d e Welch, William C.; Grant, Greg (2011). “Philadelphus spp. / Mock Orange”. Heirloom Gardening in the South: Yesterday's Plants for Today's Gardens. Texas A&M University Press. p. 103. ISBN 9781603442138
- ^ 後でも触れるように、同じ頃にやはり中近東あたりからライラックがヨーロッパに持ち込まれ、これら二つの属がともに"syringa"と呼ばれて混同が生じた[11]。
- ^ a b c 北村四郎「日本植物の短報」『日本植物の短報』第26巻第1-2号、1974年3月、13頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00001078133。
- ^ a b c McKelvey, Susan Delano (1928). “Syringa vulgaris”. The Lilac: A Monograph. Macmillan. pp. 236–237
- ^ Coatsの原書 p. 344にはライラックの記述として"Gerard in 1597 had lilacs in his garden 'in very great plenty'.. he correctly related it to the privet"がみえるが、ジェラルドは Syringa alba という学名を用いてるものの、じつは白花のライラックでなく、バイカウツギのことを指していた。この紛らわしい記述に誤解してしまった解説者もいると指摘される[14]。
- ^ a b Welch, William C. (1901). “A Black List of Varieties Winter-Killed”. Ornamentals for South Dakota. Bulletin (South Dakota Agricultural Experiment Station) 72. South Dakota Agricultural College and Experiment Station. p. 195
- ^ Maximowicz (1867) Revisio Hydrangearum Asiae Orientalis apud HU (1954), p. 281
- ^ 北村 (1974):"[Philadelphus coronarius L.は 16 世紀から南欧で栽培されていたものであるが]。Maximowiczは日本のバイカウツギが輸入されたものと考えたが、この説は正しいと思う"[13]。北村四郎 & 村田源 1979, p. 123も一部同文。
- ^ RHS A-Z encyclopedia of garden plants. United Kingdom: Dorling Kindersley. (2008). pp. 1136. ISBN 1405332964
参考文献
- A・M・コーツ 著、白幡洋三郎・白幡節子 訳『花の西洋史 花木篇』八坂書房、1991年。
- Coats, Alice Margaret『Garden Shrubs and Their Histories』Dutton、1965年 。
- 鈴木庸夫、高橋冬、安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、91頁。 ISBN 978-4-416-61438-9。
- 平野隆久監修 著、永岡書店 編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、207頁。 ISBN 4-522-21557-6。
- 北村四郎、村田源『原色日本植物図鑑 木本編 (II)』(1986年6月1日 改訂12刷)保育社、1979年。 ISBN 4-586-30050-7。NDLJP:12601848。
- Hu, Shiu-ying (1954). A Monograph of the Genus Philadelphus. Arnold Arboretum
サツマウツギと同じ種類の言葉
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