クジラ類の最初期の祖先
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/19 02:19 UTC 版)
「クジラ類の進化史」の記事における「クジラ類の最初期の祖先」の解説
1983年に発見されたパキケトゥスの骨格はメソニクス類のものと大きく異なっており、クジラ類がメソニクス類から分化したものではないことを示していた。むしろ、パキケトゥスは新生代最初期にメソニクス類から分岐した直後に水中生活に適応していった鯨偶蹄類の一種であることを示していた。実際、パキケトゥスを含むクジラ類の祖先は現生の"偶蹄類"が失っているメソニクス的な特徴(三角形の歯など)を多く残していた。 興味深いのは、最初期の有蹄動物の祖先は少なくとも一部が肉食ないし腐食性であったことである。彼らから分化した"偶蹄類"や奇蹄目はその後の進化の過程の中で完全な植物食動物へと変貌を遂げ、本来の肉食動物的特徴を失った。対照的に、現在でもクジラ類は肉食動物(プランクトン食、魚食性のものも含む)であり、肉食動物としての特徴を多く残している。これは、クジラ類が海中で恒温動物として生きていくためには、栄養価の高い動物質の餌のほうが好都合であるためと考えられている。 同様に、メソニクス類も肉食動物として特殊化していく方向に進化していった。しかし、新生代初期には獲物となる大型の植物食動物が少なかったため、メソニクス類の進化は行き詰まった。漸新世には、気候の寒冷化や、肉食動物としてより洗練された肉歯目やその近縁であるネコ目(食肉目)の台頭に押され、メソニクス類は絶滅した。また、原始的なクジラ類も現生に繋がる完全な水生化を果たした系統以外は始新世末期に悉く絶滅していった。
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