キャリバン (衛星)とは? わかりやすく解説

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キャリバン (衛星)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 16:28 UTC 版)

キャリバン
Caliban
1997年にヘール望遠鏡から撮影されたキャリバンの発見画像
仮符号・別名 S/1997 U 1
Uranus XVI[1]
見かけの等級 (mv) 22.0[2]
分類 天王星の衛星
不規則衛星
軌道の種類 キャリバン群[3]
発見
発見日 1997年9月6日[4]
発見者 ブレット・J・グラッドマン
フィリップ・D・ニコルソン
ジョセフ・A・バーンズ
ジョン・J・カヴェラーズ[4]
発見場所 パロマー天文台[4]
 アメリカ合衆国
軌道要素と性質
元期:TDB 2,451,544.5(2000年1月1.0日[5]
固有軌道長半径 (ap) 7,167,000 km[5]
近天点距離 (q) 5,733,600 km
遠天点距離 (Q) 8,600,400 km
固有離心率 (ep) 0.200[5]
固有公転周期 (Pp) 579.76 [5](1.59
固有軌道傾斜角 (ip) 141.4°黄道面に対して)[5]
固有近点引数 (ωp) 349.7°[5]
固有昇交点黄経 (Ωp) 174.9°[5]
固有平均近点角 (Mp) 241.2°[5]
天王星の衛星
物理的性質
平均直径 42+20
−12
km[2]
自転周期 9.948 ± 0.019 時間[2]
絶対等級 (H) 9.160 ± 0.016[2]
9.0[6]
アルベド(反射能) 0.22+0.20
−0.12
[2]
色指数 (B-V) 0.84 ± 0.03[7]
色指数 (V-R) 0.57 ± 0.03[7]
Template (ノート 解説) ■Project

キャリバン[8][9] (Uranus XVI Caliban)は、天王星の第16衛星である。

発見と命名

キャリバンは、1997年9月6日にブレット・J・グラッドマン、フィリップ・D・ニコルソン、ジョセフ・A・バーンズ、ジョン・J・カヴェラーズによって、パロマー山天文台の200インチヘール望遠鏡を用いた観測によって発見された[10][11][12]。その際、同じく天王星の衛星シコラクスも発見されている[10]。発見は10月31日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/1997 U 1 という仮符号が与えられている[10]。その後、1999年3月27日にウィリアム・シェイクスピアの戯曲『テンペスト』に登場する怪物キャリバンにちなんで命名され、確定番号 Uranus XVI が与えられた[13]

軌道

天王星周りの不規則衛星の軌道のアニメーション。黄色がキャリバンである。
       天王星  ·        シコラクス ·        フランシスコ  ·        キャリバン  ·        ステファノー  ·        トリンキュロー
天王星の逆行衛星の軌道要素。図は、円の半径方向の軸が軌道長半径、角度方向は軌道傾斜角を示している。近点と遠点は黄線で表されており、この長さが軌道離心率の大きさに対応する。また、円の大きさは衛星の質量に対応している。

キャリバンは天王星から離れた軌道を公転しており、規則衛星の中で最も遠方を公転するオベロンのさらに10倍以上離れた距離にある[5]。天王星の自転や規則衛星の公転方向とは逆向きに公転する逆行衛星であり、軌道傾斜角はやや大きく、わずかに軌道離心率がある軌道を持っている。軌道要素が似ていることから、ステファノーおよびフランシスコと同じ力学的な集団に属していると考えられており、したがって同じ起源を持つ可能性がある[7]。太陽系内の多くの衛星を発見しているスコット・S・シェパードは、天王星からの軌道長半径が 700万 km から 800万 km の範囲にあるキャリバン、ステファノー、および S/2023 U 1 の3つの衛星を「キャリバン群 (Caliban group)」という1つのグループにまとめている[3]

物理的特徴

キャリバンのアルベドは 0.22 とされており、直径は約 42 km と推定される[2]。以前には、天王星の不規則衛星の中ではシコラクスに次いで2番目に大きい、約 72 km の直径を持つとする研究結果もあり[14]アメリカ航空宇宙局 (NASA) の紹介ページでは現在もこの値が使用されている[4]

キャリバンの色指数については幾分か矛盾する2つの数値が得られているが (B–V = 0.83 V–R = 0.52[15]、B–V = 0.84 ± 0.03 V–R = 0.57 ± 0.03[7])、わずかに赤色を示す。木星の衛星であるヒマリアよりは赤いものの、多くのカイパーベルト天体ほどは赤くない。なお、シコラクスよりはわずかに赤い色を示す[16]。表面では 0.7 μm 波長の吸収が見られ、これは表面が液体の水によって変性を受けた結果であると考える天文学者グループもある[17]

キャリバンの光度曲線からは、自転周期はおよそ2.7時間であることが示唆されていたが[16]2017年に公表されたケプラー宇宙望遠鏡からの観測結果に基づく分析ではそれよりもさらに長いおよそ10時間の周期で自転していることが判明した[2]

起源

キャリバンは天王星形成直後に存在した降着円盤 (周惑星円盤) の中で形成されたのではなく、捕獲によって衛星になったと考えられている。実際の捕獲機構は明らかになっていないものの、天体が衛星を捕獲するためには何らかの過程によるエネルギーの散逸が必要である。考えられる捕獲過程としては、原始惑星系円盤内でのガス摩擦、多体相互作用によるもの、天王星の質量が急速に増加している間の捕獲(いわゆる pull-down と呼ばれる過程)が挙げられている[14][7]

出典

  1. ^ Planet and Satellite Names and Discoverers”. Planetary Names. International Astronomical Union. 2015年1月11日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Farkas-Takács, A.; Kiss, Cs.; Pál, A. et al. (2017). “Properties of the Irregular Satellite System around Uranus Inferred from K2, Herschel, and Spitzer Observations”. The Astronomical Journal 154 (3): 13. arXiv:1706.06837. Bibcode2017AJ....154..119F. doi:10.3847/1538-3881/aa8365. 119. 
  3. ^ a b Sheppard, Scott S.. “Moons of Uranus”. Earth and Planets Laboratory. Carnegie Institution for Science. 2024年3月4日閲覧。
  4. ^ a b c d In Depth | Caliban – Solar System Exploration: NASA Science”. NASA (2017年12月5日). 2019年1月17日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. Jet Propulsion Laboratory. 2024年3月4日閲覧。
  6. ^ Natural Satellites Ephemeris Service”. Minor Planet Center. 2024年3月4日閲覧。(「Selection of Objects」にて「All Uranian outer irregular satellites」と「I require Orbital Elements」にチェックを入れて「Get Information」と表示されると天王星の全ての不規則衛星の軌道要素が表示されるが、ここに表記されているのは他の天体からの摂動の影響を除外していない特定の日時を元期とした軌道要素であることに留意)
  7. ^ a b c d e Grav, Tommy; Holman, Matthew J.; Fraser, Wesley C. (2004-09-20). “Photometry of Irregular Satellites of Uranus and Neptune”. The Astrophysical Journal 613 (1): L77–L80. arXiv:astro-ph/0405605. Bibcode2004ApJ...613L..77G. doi:10.1086/424997. 
  8. ^ 衛星日本語表記索引”. 日本惑星協会. 2019年3月9日閲覧。
  9. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  10. ^ a b c Brian G. Marsden (1997年10月31日). “IAUC 6764: Sats OF URANUS”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月17日閲覧。
  11. ^ Brian G. Marsden (1997年10月31日). “IAUC 6765: Sats OF URANUS”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月17日閲覧。
  12. ^ 天王星に二つの新衛星”. 国立天文台・天文ニュース. 国立天文台 (1997年11月6日). 2019年1月17日閲覧。
  13. ^ Brian G. Marsden (1999年3月27日). “IAUC 7132: Sats OF URANUS”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. International Astronomical Union. 2019年1月17日閲覧。
  14. ^ a b Sheppard, Scott S.; Jewitt, David; Kleyna, Jan (2005). “An Ultradeep Survey for Irregular Satellites of Uranus: Limits to Completeness”. The Astronomical Journal 129 (1): 518–525. arXiv:astro-ph/0410059. doi:10.1086/426329. ISSN 0004-6256. 
  15. ^ Rettig, T. W.; Walsh, K.; Consolmagno, G. (2001-12). “Implied Evolutionary Differences of the Jovian Irregular Satellites from a BVR Color Survey”. Icarus 154 (2): 313–320. Bibcode2001Icar..154..313R. doi:10.1006/icar.2001.6715. 
  16. ^ a b Maris, Michele; Carraro, Giovanni; Cremonese, Gabrielle; Fulle, Marco (2001-05). “Multicolor Photometry of the Uranus Irregular Satellites Sycorax and Caliban”. The Astronomical Journal 121 (5): 2800–2803. arXiv:astro-ph/0101493. Bibcode2001AJ....121.2800M. doi:10.1086/320378. http://www.iop.org/EJ/article/1538-3881/121/5/2800/200443.html. 
  17. ^ Schmude, Richard (2008). Uranus, Neptune, Pluto and How to Observe Them. Springer. ISBN 978-0-387-76601-0. https://books.google.com/books?id=kqNr7rjw028C&pg=PA58&lpg=PA58#v=onepage&q= 

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