イタリアの同胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/03 00:16 UTC 版)
| イタリアの同胞 Fratelli d'Italia(FdI) |
|
|---|---|
| 党首 | ジョルジャ・メローニ |
| 成立年月日 | 2012年12月17日 |
| 本部所在地 | ラツィオ州ローマ |
| 代議院議席数 |
119 / 400 (30%)
|
| 元老院議席数 |
65 / 200 (33%)
|
| 欧州議会 |
24 / 76 (32%)
|
| 党員・党友数 |
130,000名[1](2021年時点)
|
| 政治的思想 | |
| 政治的立場 | 右派 [A] - 極右[B][注釈 1] |
| 機関紙 | ラ・ガゼッタ・トリコローレ La Gazzetta Tricolore |
| シンボル | 三色旗と同色の綱と結び目 |
| 国際組織 | 欧州保守改革党 (欧州政党) 欧州保守改革グループ (欧州会派) |
| 公式サイト | www.fratelli-italia.it |
| ^ a: FdIは民主主義に反対しない極右の下位区分である急進右派[19][20][21][22]と見なされる。 |
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イタリアの同胞(イタリアのどうほう、伊: Fratelli d'Italia : FdI)は、イタリアの政党。保守主義、国家主義、ポピュリズム、伝統重視をスローガンに掲げて2012年12月17日に結党された[3]。基本理念としてイタリア・ナショナリズム、欧州懐疑主義、社会保守主義、右派ポピュリズムを掲げ、外交ではNATO支持を明言している[23][24][25]。歴史的にはポスト・ファシズム系のイタリア社会運動の政治文化を一部引き継いでいる[26]。一部メディアや分析では急進右派と分類される場合があるが[21][27]、政党自身は国民保守主義を主張し、中道右派連合に所属している[3][16][17][18]。
結党時はイタリアの同胞・国民中道右翼(伊: FdI–CN)としていたが、2014年にイタリアの同胞・国民同盟(伊: FdI-AN)に改称し、2018年に現在の党名に簡略化された。
概説
旧国民同盟の党首代行であり、同盟が合流した自由の人民の第三次ベルルスコーニ政権の国防大臣イニャツィオ・ラ・ルッサとジョルジャ・メローニ議員が自派閥と共に離脱して設立された。既にベルルスコーニ政権から離反して新党を立党したジャンフランコ・フィーニ下院議長(旧国民同盟書記長)のイタリアのための未来と自由に続き、旧国民同盟派議員の自由の人民からの離脱が相次ぐ形となった。
完全に自由の人民と決別したフィーニに対して、ルッサは新たに同党を中心にした選挙連合「中道右派連合」には参加する意思を表明している[28]。後にフォルツァ・イタリア出身で同党の再結党には加わらなかったグイード・クロセット議員のグループも合流した。
FdIの政治主張はその大部分が国民同盟(AN)及びその前身となったイタリア社会運動(MSI)のイデオロギーを継承している[29][30]。即ち保守主義とナショナリズムであり、またリスボン条約以降の欧州懐疑主義の主張も存在している[31]。経済面では経済的自由主義を採用している。欧州懐疑主義の観点から五つ星運動、同盟といった他の反EU政党と協力する場合もある。
党首のジョルジャ・メローニは、イタリアの政治体制を議院内閣制から、大統領制(現状のイタリアにおける大統領は議会が選出し、概ね象徴的な元首)へと移行させることを主張している。これは現行制度下での大統領が議会によって選出され、主に儀礼的・調整的役割に留まっているのに対し、直接選挙で選ばれる強力な大統領を設ける構想である。[32]
党史
設立経緯
2012年11月、旧国民同盟(AN)出身のイグナツィオ・ラ・ルッサとマウリツィオ・ガスパッリは、自由の人民(PdL)の党首であったシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相の政治スキャンダルに端を発した党内対立において、旧フォルツァ・イタリア(FI)出身のアンジェリーノ・アルファノ副首相の動きを支持する声明を発表した。既にANの創設者でありベルルスコーニの盟友であったジャンフランコ・フィーニ下院議長がイタリアのための未来と自由(FLI)を結党し、PdLを離党していたため、PdLの内部対立は決定的なものとなった。[33] 2012年12月16日、AN出身のジョルジャ・メローニ議員、ファビオ・ランペッリ、FI出身のグイド・クロセット、そしてPdL結党後に政界入りしたジュゼッペ・コッシガら4名の右派議員が党内グループを結成した。彼らは中道政治政党を支持基盤とするマリオ・モンティ政権の財政改革を批判し、モンティ支持の中道政党との連帯を模索していたベルルスコーニらPdL指導部の方針に反発した。[34]
2012年12月17日、イグナツィオ・ラ・ルッサはPdLからの離党を宣言し、新党「全国中道右派(Centrodestra Nazionale)」を結党し、他の反指導部勢力との連帯も模索していると発言した。[35] 一方、離党に関しては中道政党連合に加わって明確にPdLと対立していたイタリアのための未来と自由(FLI)に対して、PdLとの選挙連合は維持し、むしろPdL支持者に選択肢を与えるという形で提案された[要出典]。 同日、ジョルジャ・メローニらのグループは新党「イタリアの同胞(Fratelli d'Italia)」を結党した[要出典]。
2012年12月21日、似た政治的立場を持つラ・ルッサ派の「中道右派(Centrodestra Nazionale)」とメローニ派の「イタリアの同胞(Fratelli d'Italia)」は合流に同意し、新党名は両組織の名称を合わせて「Fratelli d'Italia – Alleanza Nazionale(FdI–AN)」に決定された。[36] しかし新党名は長いため、メディアなどでは単に「イタリアの同胞」と省略されることが多い。 結党後、ロンバルディア州を中心に地方議会のPdL所属議員がFdI–AN会派を設立して移籍したが、地方議員団内ではラ・ルッサ派が多数を占めている。[37] また、上院(元老院)でもFdI–ANの議員団が結成され、[38] 欧州議会にも議員を送り出した。
2013年イタリア総選挙ではFdI–ANはPdLを中心とする中道右派連合の一部として出馬し、下院で約2%の得票率を獲得し、9議席を得た。[39] 選挙後、党執行部は党首にイグナツィオ・ラ・ルッサ、副党首にジョルジャ・メローニ、幹事長にグイード・クロセットを選出した。[40] 一方、マリオ・モンティ改革を支持して中道連合に加わっていたイタリアのための未来と自由(FLI)は全議席を失い、イタリア社会運動(MSI)から国民同盟を経て続く右派系統として、FdI–ANの地位が確立された。
国民同盟勢力の結集
総選挙後、躍進した五つ星運動(M5S)に対する危機感から、イタリア民主党(PD)とPdLは大連立(Grande coalizione)を形成し、エンリコ・レッタ政権が成立した。しかしこの大連立は、ベルルスコーニとレッタ首相との間の方針の対立や、PdL内での反ベルルスコーニ派の動きの再燃によって早くも揺らぎを見せた。F dI‑AN は Letta 政権に支持を投じない立場を取るなど政局に関与している[要出典]。
2013年9月、Fratelli d’Italia は「祖国についての講習会(Officina per l’Italia、略称 OpI)」と名付けた政治‑文化的・企画的プラットフォームを立ち上げ、右派・中道右派の幅広い勢力との連帯を進める試みを開始した[要出典]。メローニら設立者だけでなく、50名を超える政治家・知識人・文化人が政党横断的に委員会に招かれ、イタリア右派再編のためのマニフェスト作りに着手した。[41] 2013年12月、旧Alleanza Nazionaleの資産管理を担う国民同盟財団(Fondazione Alleanza Nazionale)は、2014年欧州議会選挙において旧ANのロゴを用いることを許可する動議を可決した。FdI はこのロゴをシンボルの一部として使用することになった。[42][43]
2014年2月、FdI‑CN の執行部は、退任した イグナツィオ・ラ・ルッサ に代えて ジョルジャ・メローニ を第2代党首に選出した。[44] 同年、党名は 「Fratelli d'Italia – Alleanza Nazionale(FdI‑AN)に改称され、結党当初の「Centrodestra Nazionale」という名前で活動する場面もあったが、その後2018年に「イタリアの同胞(Fratelli d’Italia、FdI)」に簡略化された。 2014年欧州議会選挙では、FdI‑AN は全国で約3.66% の得票を獲得し、特にラツィオ州では約5.6% を得た。[45][46] また、2014年3月には Fiuggi にて初の全国大会(Congresso Nazionale)を開き、党のロゴに旧 AN の要素を取り入れた新しいシンボルが批准された。[47]
2015年後半、ジャンニ・アレマンノはかつてのMSI/AN系の右派勢力の再結集を模索し、Azione Nazionaleとして「国家の右派統合」を掲げる運動を立ち上げた。[48] この運動は、Fratelli d’Italia – Alleanza Nazionale を含め、右派の価値観を共有する他の小政党や運動との協調・対話を目指していた。[49]
2015年11月、政党連合ではなく政治委員会「Terra nostra – Italiani con Giorgia Meloni」(「我らの土地 ‒ メローニと共にあるイタリア人たち」)の設立が発表され、11月末に最初の総会が予定された。[50][51] この委員会には、元五つ星運動(Movimento 5 Stelle)所属の下院議員ワルテル・リツェット(Walter Rizzetto)が含まれ、2016年3月に正式にFratelli d’Italia – 国民同盟(Fratelli d’Italia ‒ Alleanza Nazionale, FdI‑AN)へ入党した。[52]
党勢拡大
2016年6月、ローマ市長選挙でFdI-ANを中心とした政党連合は中道右派政党であるフォルツァ・イタリアからの協力要請を拒否し、党首であるメローニを市長候補に擁立した。出馬時に妊娠中であった事などが影響し、得票率20.6%でヴィルジニア・ラッジ(五つ星運動)、ロベルト・ジャケッティ(民主党)に次ぐ第3位にとどまり決選投票に進めなかった[53]。2017年6月、イタリア共和国地方統一選挙ではピストイア市長選で、党が推薦したアレッサンドロ・トマージが当選した。2017年8月、フォルツァ・イタリアから上院議員が移籍し、上院の議席が復活した。
2017年11月、シチリア自治州知事選で元国民同盟の政治家であるネロ・ムスメーチを支援し、当選させた。同月に別の上院議員がフォルツァ・イタリアから移籍、FI離党議員の参加としては3人目となる。
2018年1月、同年の総選挙ではフォルツァ・イタリアの要請を受けて中道右派連合に参加を続ける意向を示した。選挙では新しい党名の採用を撤回し、むしろ結党時からの長大な党名を「イタリアの同胞」に簡略化した。一方で党のロゴマークではイタリア社会運動や国民同盟が使用していた「三色の炎(フィアンマ・トリコローリ)」を復活させた。同年3月、2018年イタリア総選挙において下院4.35%と上院4.26%の得票を獲得、下院議員33名・上院議員17名が当選して議席数は選挙前の3倍に躍進した。両院でそれぞれ約140万票以上を集めるなど約100万票を得た4年前の欧州議会選挙から更に党勢を伸ばし、FdIは5番目の規模を持つ政党となった。
総選挙後の組閣交渉では中道右派連合内で最大議席数となった同盟のマッテオ・サルヴィーニ書記長を首相候補に擁立したが、ハング・パーラメント化した議会でポピュリズムと欧州懐疑主義という共通点を持つ、五つ星運動と同盟による2党連立政権が成立した。FdIは欧州懐疑主義に関しては自党の理念にも沿う事から連立政権への閣外協力を表明、親EUのフォルツァ・イタリアとは距離を取った。後に左翼ポピュリズムと右翼ポピュリズムの対立によって連立政権は解消されるが、民主党に接近する五つ星運動やフォルツァ・イタリアに対してFdIは同盟との協力関係を継続している。
2019年1月、アブルッツォ州知事・州議会選挙でFdIのマルコ・マルジリオ上院議員が民主党、五つ星運動の候補を破って州知事に当選した。FdIが単独擁立した候補が州知事に就任するのは結党後初となる。同年5月、2019年欧州議会選挙で前回選挙から70万票以上が増加した172万票がFdIに投票され、阻止条項を越える得票率6.44%を獲得した事からFdIから6名の欧州議会議員が当選した。欧州議会議員は結党時の参加者や他政党からの移籍などでこれまでも所属していたが、欧州議会選での擁立候補当選も州知事選に続いて初となる。同年11月、地方選での勢いが続く形でウンブリア州知事・州議会選挙で10.4%を得票して州議会の第3党となった。
2020年1月、カラブリア州知事・州議会選挙で前回の2.5%から10.9%、反同盟・反サルヴィーニデモ(イワシ運動)が話題となったエミリア・ロマーニャ州知事・州議会選挙でも1.9%から8.6%へと得票率が急伸した。
2022年8月、マリオ・ドラギ首相の辞任による上下院の総選挙が前倒しで行われ、FDI含む右派連合が勝利、過半数を獲得した。10月22日にメローニ党首を首相とする右派連立政権(メローニ内閣)が発足した[54]。
党勢
選挙結果
| 下院 | ||||||
| 年度 | 得票数 | 得票率(%) | 議席数 | 増減 | 党首 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2013年 | 666,035(第8位) | 1.95 | 9 / 630 | +9 | ジョルジャ・メローニ | |
| 2018年 | 1,426,564(第5位) | 4.35 | 33 / 630 | +24 | ジョルジャ・メローニ | |
| 2022年 | 7,302,517(第1位) | 26.00 | 119 / 400 | +87 | ジョルジャ・メローニ | |
| 上院 | |||||
| 年度 | 得票数 | 得票率(%) | 議席数 | 増減 | 党首 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2013年 | 590,083(第7位) | 1.92 | 0 / 315 | 0 | ジョルジャ・メローニ |
| 2018年 | 1,286,122(第5位) | 4.26 | 17 / 315 | +17 | ジョルジャ・メローニ |
| 2022年 | 7,167,136(第1位) | 26.01 | 65 / 200 | +48 | ジョルジャ・メローニ |
| 欧州議会 | |||||
| 年度 | 得票数 | 得票率(%) | 議席数 | 増減 | 党首 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2014年 | 1,004,037(第7位) | 3.7 | 0 / 73 | 0 | ジョルジャ・メローニ |
| 2019年 | 1,726,189(第5位) | 6.4 | 6 / 73 | +6 | ジョルジャ・メローニ |
| 2024年 | 6,732,303(第1位) | 28.8 | 24 / 76 | +18 | ジョルジャ・メローニ |
脚注
注釈
出典
- ^ “Fratelli d'Italia, il boom dei tesserati”. 2025年10月21日閲覧。
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- ^ Sicily’s Political Theater Has Colorful Cast and Big Implications. The New York Times. Author - Jason Horowitz. Published 2 November 2017. Retrieved 17 June 2018.
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イタリアの同胞(FdI)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 03:58 UTC 版)
「2018年イタリア総選挙」の記事における「イタリアの同胞(FdI)」の解説
民族主義政党。Pdlから離党した国民同盟(AN)出身の一部議員によって結党された。右翼の中心であったANを通じてネオファシスト政党イタリア社会運動(MSI)の伝統を引き継いでいる。中道右派連合に参加を表明。
※この「イタリアの同胞(FdI)」の解説は、「2018年イタリア総選挙」の解説の一部です。
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