イオン液体へセルロースを溶解する意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/30 16:58 UTC 版)
「イオン液体」の記事における「イオン液体へセルロースを溶解する意義」の解説
近年、⽯油資源の枯渇や環境への影響から、⽯油資源に代わる再⽣可能資源としてバイオマスの利⽤が注⽬されている。様々なバイオマスの中でも植物の細胞壁の主成分の一つであるセルロースが非可食性バイオマスとして注目されている。 セルロースはトウモロコシなどの可⾷性バイオマスと違い、⾷料として利⽤できないため、⾷料⽣産との競合が起こらないことが⼤きなメリットである。セルロースの⽤途にバイオ燃料(例えばバイオエタノール)が挙げられる。しかしその一方でセルロースは、分子同士の水素結合力が強く、溶解することが難しい。そのため、セルロースから燃料への生化学的・化学的な変換が困難である。 さらにセルロースは、繊維や膜などの再⽣可能材料として成形して使うことができる。セルロースを成形するためには⼀度溶解した後に析出させる必要がある(析出させたセルロースは再⽣セルロースと呼ばれる)。このとき上記と同様に、セルロースを溶解する困難さが問題となる。 上記の問題を解決する理想的な溶媒の⼀つとして、イオン液体が提案されている。初めてイオン液体でセルロースを溶解した例は 1934 年の Graenacher の特許まで遡る 。しかしその後、2002年にRogersらが再発⾒し学術論⽂として報告するまで、その事実は⼀度忘れ去られていた。Rogersらの論⽂の後の発展は凄まじく、様々なイオン液体が開発された。現在では、常温以下の温和な条件でセルロースを⽐較的迅速に溶解する優れた溶媒として認知されている。他の溶媒では⾼温や⾼ pH など苛烈な条件が必要であり、イオン液体を利⽤することで溶解のエネルギーコストを抑えられることや分⼦量の低下が抑えられることが、⼤きなメリットとして挙げられる。
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